
この記事を書いた人

高島 比呂人
住宅メンテナンス診断士
建築設計の専門学校を卒業後、長年建築業界に携わってきた高島です。戸建てを中心に様々な建物に関わる中で、安全で安心できる住まいの大切さを実感してきました。その経験を活かし、ホームインスペクションでは建物の細部まで丁寧にチェックし、専門知識に基づいた分かりやすい解説を心がけています。


地震のあと、「大きな被害は見当たらないけれど、わが家は本当に大丈夫だろうか」と不安になったことはありませんか。
東京都港区には、麻布や赤坂、白金などの台地や坂道の多い地域がある一方、芝浦・港南・台場など、海に近い低地や埋立地もあります。
地形や地盤の条件が異なれば、地震による揺れ方や、注意したい地盤の変化も一様ではありません。また、同じ地域でも建物の構造、築年数、地盤改良の有無などによって被害の状況は変わります。
地震後の住宅点検では、建物の基礎や外壁だけでなく、窓やドアの動き、敷地の地面、ブロック塀や擁壁などにも目を向けることが大切です。
この記事では、港区の地域特性を踏まえ、地震後に確認したい住宅の異常、安全なセルフチェック、専門家に相談する目安を解説します。
まず確認したいのは人の安全と建物の異常
地震の直後は、住宅の点検よりも身の安全を優先してください。大きな揺れのあとには余震や落下物などによる二次災害のおそれがあります。
安全が確認でき、無理なく点検できる状況になってから、次のような変化がないか確認しましょう。
- 基礎や外壁に、以前はなかったひび割れがある
- 窓やドアが急に開閉しにくくなった
- 床や壁に、地震前とは異なる変化が見られる
- 屋根材のずれや外壁材の剥がれが見える
- 敷地の地面に亀裂、沈下、段差などが生じている
- ブロック塀や擁壁に傾き、ひび割れ、膨らみがある
こうした症状は地震による損傷の可能性を考える手がかりですが、一つの症状だけで建物の安全性や原因を判断することはできません。
目次
住まいの施工事例・メンテナンス情報はSNSでも発信中!
Instagramを中心に、住宅診断や施工事例、住まいの情報を更新しています。
港区の地形・地盤と地震への備え
台地や坂道が多い地域
港区の内陸部には、台地と谷地が入り組んだ地形が見られます。麻布や赤坂、白金周辺にも坂道や高低差のある場所が数多くあります。
こうした地域では、建物そのものに加えて、敷地の高低差や擁壁の状態にも注意が必要です。
擁壁とは、高低差のある土地で土が崩れるのを防ぐための構造物です。地震後に新しいひび割れや膨らみ、傾きなどが見られる場合は、近づかずに専門家や管理者へ相談しましょう。
臨海部の低地・埋立地
芝浦・港南・台場などの臨海部には、低地や埋立地が含まれます。場所によっては、地震時の地盤の揺れや液状化について確認しておくことが大切です。
液状化とは、地下水を多く含む砂質地盤などが強い揺れを受け、地盤の支持力が低下する現象です。地面から砂や水が噴き出したり、地面に段差ができたりする場合があります。
ただし、埋立地だから必ず液状化するわけではありません。実際の危険性は地盤条件や対策工事の状況などによって異なります。
住所だけで地盤の安全性は決められない
同じ港区内でも、敷地ごとの地盤条件には違いがあります。自宅周辺の地形や災害リスクを知るには、港区や東京都などが公開する防災情報、液状化予測図、地形に関する資料を確認するとよいでしょう。
これらの資料は地域の傾向を知るためのものであり、個々の住宅の安全性を保証するものではありません。


地震後に注意したい住宅の異常6つ
地震後の点検では、目立つ損傷だけでなく、地震前との変化を確認することが大切です。次の表を参考に、異常の種類と対応の目安を整理しましょう。
| 確認したい症状 | 注意点 | 対応の目安 |
|---|---|---|
| 屋根材のずれ・落下 | 落下物や雨漏りのおそれ | 近づかず専門家へ相談 |
| 窓・ドアの開閉不良 | 建具や建物の変形などの可能性 | 発生箇所を記録して相談 |
| ブロック塀の傾き | 倒壊によるけがのおそれ | 近づかず管理者等へ連絡 |
| 擁壁のひび・膨らみ | 地盤や擁壁の変状の可能性 | 離れた場所から確認し早急に相談 |
| 地面の亀裂・沈下 | 地盤の変形や液状化などの可能性 | 危険な場所を避けて専門家へ |
| 基礎・外壁のひび割れ | 表面仕上げや下地の損傷の可能性 | 位置・大きさを記録し確認 |
① 屋根材のずれや落下
瓦や屋根材がずれている場合、余震や強風で落下するおそれがあります。屋根に上ったり、軒下に近づいて確認したりすることは避けましょう。
② 窓やドアが急に開閉しにくくなった
地震前は問題なく動いていた建具が急に引っかかるようになった場合、建具自体の不具合のほか、建物の変形などが関係している可能性があります。ただし、開閉不良だけで建物が傾いたとは判断できません。
③ ブロック塀や門柱が傾いている
ブロック塀や門柱の傾き、ひび割れ、ぐらつきは、倒壊事故につながるおそれがあります。特に道路や通学路に面した場所では、周囲の人が近づかないよう注意し、管理者や専門家、必要に応じて自治体へ連絡しましょう。
④ 擁壁にひび割れや膨らみがある
坂道や高低差のある敷地では、擁壁の変化にも注意が必要です。新しい亀裂、膨らみ、傾き、周辺地盤の沈下などが見られる場合は、余震や雨によって状態が変化する可能性があります。近づいて詳しく調べようとせず、安全な場所へ離れてください。
⑤ 地面に亀裂や段差ができた
敷地や周辺道路に亀裂、沈下、砂や水の噴出などが見られた場合は、地盤の変化が生じている可能性があります。原因は現地調査が必要であり、見た目だけで液状化や不同沈下と断定することはできません。
⑥ 基礎や外壁にひび割れが生じた
基礎コンクリートや外壁に新しいひび割れが見つかった場合は、長さ、位置、方向、周囲の変化を記録しましょう。ひびの色や断面の見た目だけでは、地震で発生したものか、以前からあったものかを確実に区別できません。

地震で住宅に変化が生じる理由
地震が起こると、建物には水平方向などに大きな力が加わります。その力は柱や壁、床、基礎などを通じて伝わります。
窓やドアなどの開口部の周辺、部材の接合部分などでは、建物の構造や仕上げの条件によって、ひび割れなどの変化が見られることがあります。
また、地盤の揺れ方や変形が建物に影響する場合もあります。ただし、ひび割れがあるからといって、直ちに構造的な損傷や耐震性能の低下が生じたとは限りません。
一方、外見上の損傷が少なくても、見えない部分に問題がないと断定することもできません。地震前の状態との比較や、必要に応じた専門家の調査が重要です。
地震後に安全にできる住宅セルフチェック
点検は、余震や落下物などの危険がなく、安全に行える場合に限って実施してください。建物に大きな損傷がある、異音がする、傾きが明らかであるといった場合は、点検より避難を優先します。
① ガス・電気・水道などの異常を確認する
ガス臭がする場合は、火気や電気のスイッチを使用せず、安全な場所へ避難してガス事業者などに連絡してください。
水漏れが疑われる場合は、目に見える配管や床の濡れを安全な範囲で確認します。水道メーターの確認も参考になりますが、使用中の設備などによって表示が動く場合もあり、メーターだけで漏水箇所は特定できません。
② 窓やドアの動きを確認する
無理なく操作できる範囲で、窓やドアの開閉に変化がないか確認します。地震前と比べて急に重くなった場所があれば、部屋と位置を記録しておきましょう。
③ 基礎や外壁を地上から観察する
安全な場所から基礎や外壁を見て、ひび割れ、剥がれ、ずれなどがないか確認します。危険な場所や狭い隙間には入らず、届かない部分は未確認として記録します。
④ 床や室内の変化を確認する
床に以前はなかった段差や違和感がないか、壁と天井の取り合いに新しい隙間がないかを確認します。
ビー玉が転がるかどうかは床の仕上げや局所的な凹凸にも左右されるため、建物の傾きを正確に判断する方法ではありません。気になる場合は、専門家による測定が必要です。
⑤ 敷地や塀を安全な位置から確認する
ブロック塀や擁壁に異常が疑われる場合は、近づかず、安全な場所から確認してください。倒壊や崩落のおそれがあるときは、写真撮影のために近寄らないことが大切です。
⑥ 日付と写真を記録する
確認できた範囲について、撮影日、場所、気づいた変化を記録しておきましょう。地震前の写真があれば比較に役立ちます。
床下や屋根裏、損傷した建物の内部などへ無理に入る必要はありません。危険がある場合は、専門家の確認を待ちましょう。

専門家による住宅点検と相談の目安
地震後の住宅点検では、目に見えるひび割れだけでなく、建物全体の変形、基礎や構造部材の状態、地盤の変化などを総合的に確認する必要があります。
専門家による調査では、状況に応じて基礎のひび割れの幅や位置、床の傾斜、建具の状態、外壁の損傷などを確認します。必要に応じて、構造や地盤に詳しい専門家による追加調査を検討します。
早めに相談したいケース
- 地震後に複数の窓やドアが急に開閉しにくくなった
- 基礎や外壁に大きなひび割れ、ずれ、剥がれが生じた
- 床に新しい傾斜や段差が生じたように感じる
- 給湯器や配管に傾き、水漏れなどの異常がある
- 擁壁やブロック塀にひび割れ、傾き、膨らみが見られる
特に擁壁の変状や塀の倒壊のおそれがある場合は、住宅の通常点検を待たず、安全を確保したうえで自治体や適切な専門家に相談してください。
住宅診断と耐震診断は異なる
住宅診断(ホームインスペクション)は、主に建物の劣化や不具合の状況を把握し、維持管理や修繕を考えるための調査です。
一方、耐震診断は建物の構造や仕様などを調べ、地震に対する性能を専門的に評価するものです。通常の住宅診断だけで耐震性能を保証できるわけではありません。
建築時期と耐震基準も確認しておこう
住宅の地震対策を考える際は、建築時期も参考になります。特に木造住宅では、1981年と2000年の基準の変化が、耐震診断を検討する際の手がかりになります。
| 建築時期の目安 | 確認したいこと |
|---|---|
| 1981年5月以前 | 旧耐震基準に該当する可能性があり、耐震診断を検討したい |
| 1981年6月~2000年5月 | 新耐震基準の時期。木造住宅では接合部や壁の配置なども確認したい |
| 2000年6月以降 | 木造住宅の接合部や耐力壁の配置などに関する基準が明確化された時期 |
これらは制度上の区切りを簡略化した目安です。実際の適用基準は建築確認の時期や建物の条件によって異なります。また、新しい基準で建てられた住宅でも、地震による被害が生じないとは限りません。
補修費用・耐震診断・地震保険の考え方
補修方法は原因を確認してから決める
基礎にひび割れがある場合でも、表面の補修で対応できるのか、構造的な調査や補強が必要なのかは、ひび割れの原因と状態によって異なります。
また、建物の傾きが疑われる場合は、建物側の変形なのか、地盤の変化が関係しているのかなど、原因を調べる必要があります。
擁壁やブロック塀の補修も、状態によって補修・補強・撤去・再構築など対応が異なります。工法を決める前に、適切な調査を受けることが重要です。
| 検討する内容 | 費用を左右する主な条件 |
|---|---|
| 住宅の現況調査 | 調査範囲、建物規模、必要な測定 |
| 耐震診断 | 建物構造、図面の有無、調査方法 |
| 基礎・外壁の補修 | 損傷の原因、範囲、補修工法 |
| 擁壁・ブロック塀の改修 | 構造、規模、敷地条件、施工方法 |
金額は個々の条件で大きく異なるため、現地確認を行ったうえで見積もりを取ることが基本です。港区の耐震化に関する支援制度も、対象となる建物や申請条件を確認しておくとよいでしょう。
地震保険や罹災証明書について
地震による住宅被害が生じた場合、地震保険に加入していれば、契約内容や損害認定に応じて保険金が支払われる可能性があります。
被害を発見したら、安全を優先しながら写真や発生時期を記録し、加入している保険会社へ確認しましょう。写真だけで保険金の支払いが決まるわけではありません。
また、自治体が発行する罹災証明書は、住家の被害程度を証明するものであり、建物の耐震性能や今後の安全性を保証する書類ではありません。
地震後の訪問営業には慎重に対応する
地震のあとに「今すぐ補強しないと危険」「保険で必ず無料になる」などと工事を急がされた場合は、その場で契約せず、説明や見積もりの根拠を確認しましょう。
ただし、実際に倒壊や落下の危険がある場合は、契約の検討よりも避難と安全確保を優先してください。

港区の住宅と地震対策についてよくある質問
Q. 震度いくつ以上の地震で住宅を点検すべきですか?
震度だけで一律に決めることはできません。強い揺れを感じた場合や、建物・設備に異常が見られる場合は、安全が確保できた段階で確認しましょう。比較的小さな揺れでも、以前から損傷がある住宅などでは注意が必要です。
Q. 基礎に細いひび割れがあれば危険ですか?
細いひび割れには、コンクリートの収縮などが関係するものもあります。一方、構造や地盤の変化が関係している場合もあります。幅だけでなく、位置、深さ、方向、周辺の状態を含めて判断する必要があります。
Q. ビー玉が転がる家は傾いているのでしょうか?
ビー玉の動きは床材の凹凸や施工時の状態などにも影響されます。ビー玉だけで建物の傾きや安全性を判断することはできません。地震後に明らかな変化を感じる場合は、専門家に相談しましょう。
Q. 港区の高台なら地震に強いのでしょうか?
高台であることだけで安全性は判断できません。台地の地盤条件に加え、斜面や擁壁の状態、建物の構造や築年数なども関係します。敷地ごとの状況を確認することが大切です。
Q. 埋立地に建つ住宅は必ず液状化しますか?
いいえ。液状化の発生は地盤の性質や地下水の状況、地震の揺れ、地盤改良などによって異なります。港区が公表している液状化マップなどを参考に、地域の傾向を確認しましょう。
Q. 地震後に建物へ危険を示す判定が貼られた場合は?
被災建築物応急危険度判定は、余震などによる二次災害を防ぐための判定です。危険や要注意の表示がある場合は、その指示や注意事項に従ってください。「調査済」であっても、建物の恒久的な安全性が保証されたわけではありません。
Q. AI住宅診断で耐震性もわかりますか?
家メンテのAI住宅診断は、住まいの劣化や不具合について回答内容を整理するオンラインの簡易診断です。耐震性能の評価や、地震後の建物の安全判定を行うものではありません。耐震性が気になる場合は、専門的な耐震診断をご検討ください。
まとめ|港区の地震対策は地盤と建物の両方を知ることから
港区には、台地や坂道、低地、埋立地など、多様な地形があります。地震への備えを考えるときは、地域の地盤条件だけでなく、自宅の構造や築年数、敷地の状況を確認することが重要です。
地震後は、まず人の安全を確保し、無理なく確認できる範囲で基礎、外壁、建具、地面、塀や擁壁の変化を記録しましょう。
ひび割れや建具の不調が見つかっても、それだけで建物の危険性を断定することはできません。一方、倒壊や落下、地盤の崩落などのおそれがある場合は、自己点検を続けず、安全な場所へ避難して適切な相談先に連絡してください。
平常時から住宅の状態を写真で記録し、必要に応じて専門家による点検や耐震診断を受けることが、地震への備えにつながります。
港区の防災情報も確認しましょう
港区では、揺れやすさや液状化などに関するハザードマップを公開しています。自宅周辺の地域特性を知るための資料として活用しましょう。
住まいの状態が気になる方は家メンテのAI住宅診断へ
家メンテでは、スマートフォンから利用できる無料のAI住宅診断をご案内しています。約50問の質問に答えることで、基礎・床下、外壁、屋根など6つの視点から、住まいの状態を整理できます。
この診断は住宅の現状把握を補助するもので、地震による損傷の原因や建物の安全性を確定するものではありません。地震後に危険が疑われる場合は、AI診断よりも避難や専門家への相談を優先してください。
基礎や外壁の異常が気になる方へ
「基礎のひび割れが以前より増えた気がする」「地震後に窓の開閉が重くなった」など、住宅の状態に不安がある場合は、家メンテへご相談ください。
住宅診断の対応範囲や費用、必要に応じた専門調査については、お問い合わせ時にご確認いただけます。
お電話でのご相談:0120-688-822
SNSでも住まいの情報を発信中!
施工事例や住宅の劣化サイン、
季節ごとのメンテナンス情報などを発信しています。
住宅診断の様子など
季節のメンテナンス情報など
家メンテの最新情報など

