
大きな地震のあと、「家具や室内の片付けは終わったけれど、家そのものは大丈夫だろうか」と不安になることはありませんか。
横浜市には斜面地が多く、土地の高低差を支える擁壁が設けられた住宅地もあります。地震後は建物だけでなく、敷地や擁壁など、住まいの周囲にも目を向けることが大切です。
ただし、ひび割れや傾きを見つけたからといって、見た目だけで原因や安全性を判断することはできません。まずは身の安全を確保し、無理のない範囲で変化を記録して、必要に応じて専門家へ相談しましょう。
この記事では、横浜市で造成地や擁壁のある家にお住まいの方に向けて、地震後の確認ポイント、日頃の備え、専門家に相談する目安をご紹介します。
この記事のポイント
- 地震後は、建物の点検より先に、人の安全と避難経路を確保する。
- 擁壁のひび割れ・ふくらみ・ずれ、地面の沈下などは、近づかずに確認する。
- 基礎・外壁・建具などに、地震前と違う変化がないか記録する。
- セルフチェックやAI住宅診断だけで、建物・地盤・擁壁の安全性は判断できない。
- 新たな傾きや漏水などがある場合は、長期間様子を見ず、早めに相談する。
この記事を書いた人

高島 比呂人
住宅メンテナンス診断士
建築設計の専門学校を卒業後、長年建築業界に携わってきた高島です。戸建てを中心に様々な建物に関わる中で、安全で安心できる住まいの大切さを実感してきました。その経験を活かし、ホームインスペクションでは建物の細部まで丁寧にチェックし、専門知識に基づいた分かりやすい解説を心がけています。

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1.地震後は、まず身の安全を確保する
揺れが収まっても、余震や落下物による危険は残ります。家の状態を調べようとして、危険な建物に入ったり、擁壁やブロック塀に近づいたりしないでください。
- 建物が大きく傾いている、部材が落ちそうな場合は、その場を離れる。
- ガス臭がある場合は、火気や電気スイッチを使わず、安全な場所からガス事業者へ連絡する。
- 煙や火花、焦げたにおいがある場合は、設備に触れず退避する。
- 避難情報や自治体の案内が出ている場合は、その指示に従う。
写真撮影や確認のために、避難や通報を遅らせないことが大切です。
2.こんな変化があったら、放置せず相談を
安全な場所から確認できる範囲で、地震前と違う状態がないか見てみましょう。次の表は相談の目安であり、建物の安全性を判定するものではありません。
| 気になる変化 | 対応の目安 |
|---|---|
| 擁壁に新しいひび割れ、ふくらみ、ずれ、傾きがある | 近づかず、安全な場所へ移動する。自治体や擁壁・地盤を扱う専門家へ早急に相談する。 |
| 地面に大きな亀裂、沈下、砂や水が噴き出した跡がある | 周囲へ不用意に立ち入らず、建物と地盤の両方について相談する。 |
| 屋根材や瓦がずれている、外壁の一部が浮いている | 落下するおそれがある場所を避け、地上から確認する。屋根には上らず、専門業者へ相談する。 |
| 給湯器が傾いた、配管から水が漏れている | 使用を控え、安全に操作できる場合のみ止水する。設備業者などへ早めに連絡する。 |
| 基礎や外壁に新しいひび割れがある | 場所や状態を写真で記録する。大きな割れ、ずれ、広がりがある場合は早急に相談する。 |
| 床の傾きや、複数のドア・窓の開閉不良が急に生じた | 無理に動かさず、建物や地盤の状態を専門家に確認してもらう。 |
ひび割れの見た目だけで、原因を決めつけない
基礎や外壁のひび割れには、地震のほか、材料の乾燥収縮、経年劣化、地盤の変化など、さまざまな原因が考えられます。
ひびの色や汚れだけで、発生時期や地震との関係を断定することはできません。以前の写真と比較し、いつ気づいたか、どの場所にあるかを記録しましょう。
水漏れや地面の変化は、長期間の様子見をしない
漏水を放置すると、床下や壁の内部に水が広がることがあります。また、地面の沈下や擁壁の変形は、建物の点検とは別に、地盤や擁壁の専門的な確認が必要になる場合があります。
新たな異常が見つかった場合は、「半年後に比較すればよい」と考えず、まず相談して対応時期を確認してください。

3.横浜市では、建物と敷地をあわせて確認する
造成地は、区画ごとの条件を確認する
造成地とは、斜面を削ったり、土を盛ったりして、住宅などを建てられるよう整えた土地です。土地の成り立ちや地盤の状態、排水の仕組みは、区画によって異なります。
造成地であることだけで危険と決まるわけではありません。造成や地盤調査の資料、過去の補修記録などを確認し、自宅の敷地の条件を知ることが大切です。
擁壁は、ひび割れ・ふくらみ・排水の変化に注意する
擁壁は、高低差のある土地で土砂が崩れることを防ぐための構造物です。建物の基礎や、敷地境界のブロック塀とは役割が異なります。
地震後は、新しいひび割れ、ふくらみ、ずれ、傾きなどがないか、安全な距離から確認します。普段と違う水の流れや、土砂の流出にも注意しましょう。
大雨で地盤に水が多く含まれると、擁壁にかかる力が増える場合があります。異常がある擁壁には近づかず、水抜き穴を自分で掘ったり、壁を押して確かめたりしないでください。
ハザードマップと個別調査を使い分ける
横浜市のハザードマップなどで、自宅周辺の土砂災害や液状化などの想定を確認しておきましょう。
ただし、地図の情報だけで個別の建物・擁壁・地盤の安全性を判断することはできません。気になる変化がある場合は、現地での確認につなげることが必要です。
4.自分でできる確認は、安全な場所からの観察と記録
セルフチェックの目的は、危険度を自分で確定することではなく、地震前との変化を把握し、相談に役立つ情報を残すことです。
① 建物と周囲を離れた位置から見る
屋根や外壁の落下しそうな部分、擁壁や塀の傾き、地面の亀裂などを確認します。敷地を一周することにこだわらず、危険な場所には入らないでください。
② 基礎・外壁の変化を記録する
安全に近づける場所に限り、ひび割れなどを撮影します。建物のどの位置か分かる全体写真と、状態が分かる接写を残すと、相談時に伝えやすくなります。
ひび割れの幅を記録する場合は、クラックスケールなどを使います。名刺の厚さや、ひびに差し込めるかどうかで、安全性を判断しないでください。
③ 室内の変化を確認する
- 地震前と比べて、ドアや窓が開閉しにくくなっていないか。
- 壁や天井の境目に、新しい隙間やひび割れがないか。
- 床に沈みや、以前は感じなかった傾きがないか。
- 天井や壁に、水漏れによるシミが出ていないか。
ビー玉の転がりやスマートフォンの水平器は、床材の凹凸や測り方に左右されます。それだけで建物の傾きや危険性を判定せず、気になる場合は専門的な計測を依頼しましょう。
④ 設備の異常を確認する
安全に確認できる場合は、給湯器や配管の周囲に水漏れや傾きがないかを見ます。家庭内の水の使用をすべて止めても水道メーターのパイロットが動く場合は、漏水の可能性があります。
メーターが動かなくても、すべての漏水を否定できるわけではありません。濡れや水音などの異常があれば、設備業者などに相談してください。
屋根・床下・外壁の調査は無理をしない
屋根に上る、床下へ潜る、外壁タイルを叩く、塀を揺らすといった確認は避けましょう。地震後は部材が不安定になっている可能性があります。確認できない場所は「未確認」と記録し、専門家に任せてください。
5.専門家に相談するときのポイント
建物・擁壁・地盤では、必要な調査が異なる
基礎のひび割れや建具の不調、擁壁の変形、地面の沈下は、原因がそれぞれ異なります。一般的な住宅診断だけでは、擁壁の安定性や地盤の状態まで判断できない場合があります。
相談する際は、建物の住所、建築時期、気づいた変化、発見日時、写真、過去の補修履歴などを伝え、必要な調査に対応できるか確認しましょう。
住宅診断と耐震診断の違い
一般的な住宅診断は、目視や計測を中心に、建物の劣化や不具合の兆候を確認するものです。一方、耐震診断は、図面や現地調査などをもとに、地震に対する建物の強さを評価するものです。
「ひび割れの状態を知りたい」のか、「耐震性を確認したい」のか、目的を伝えて適切な調査を選びましょう。
応急危険度判定は、罹災証明や詳細調査とは別
大きな地震のあとには、自治体が被災建築物の応急危険度判定を実施する場合があります。余震による倒壊や落下物など、二次災害の危険性を応急的に調べるものです。
- 赤色「危険」:建物への立ち入りが危険な状態。
- 黄色「要注意」:立ち入りには十分な注意が必要な状態。
- 緑色「調査済」:応急判定では使用可能とされた状態。
判定の表示や注意事項に従ってください。緑色の表示でも、損傷がないことや、その後も安全であり続けることを保証するものではありません。
また、応急危険度判定は、罹災証明のための調査や、修繕方法を決めるための詳細調査とは異なります。
6.点検・補修費用は、原因と調査範囲で変わる
地震後の点検や補修にかかる費用は、建物の規模、被害の状態、必要な調査、工事方法などによって異なります。ひび割れの長さだけで、適切な工法や費用が決まるわけではありません。
| 相談・対策の内容 | 費用を確認するときのポイント |
|---|---|
| 建物の現況確認・住宅診断 | 調査する範囲、床下・小屋裏調査の有無、報告書の内容を確認する。 |
| 耐震診断 | 建物の構造や図面の有無、診断方法を確認する。 |
| 基礎のひび割れ補修 | 原因調査の要否と、補修・補強それぞれの目的を確認する。 |
| 擁壁・地盤の調査や対策 | 専門調査や設計の必要性、隣地への影響、工事範囲を確認する。 |
| ブロック塀の撤去・改修 | 塀の高さ・長さ、撤去処分、周囲の安全確保にかかる費用を確認する。 |
見積もりでは、調査費、設計費、工事費、処分費などの内訳を確認しましょう。自治体の助成制度を利用したい場合は、対象条件や申請時期を、契約・着工前に確認してください。
「保険で無料」と言われても、その場で契約しない
保険金の支払い対象や金額は、契約内容や保険会社の判断によって決まります。「必ず保険が使える」「自己負担は一切ない」といった説明だけで契約しないようにしましょう。
被害が疑われる場合は、安全を優先しながら写真や修理の記録を残し、加入している保険会社や代理店に確認してください。
7.地震が来る前にしておきたい備え
建築時期と耐震改修の履歴を確認する
耐震性を考える際には、築年数だけでなく、建築確認の時期や適用された基準、耐震改修の履歴を確認することが大切です。
- 1981年の新耐震基準導入前の住宅は、耐震診断を検討する。
- 新耐震基準の木造住宅でも、2000年の規定明確化より前のものは、接合部などの確認を検討する。
- 新しい住宅でも、劣化や増改築、地盤の条件によって必要な確認は変わる。
建築時期だけで安全性が確定するわけではありません。図面や確認済証などがあれば、相談時に用意しましょう。
日頃の状態を記録する
- 基礎・外壁・擁壁を、安全な場所から撮影しておく。
- 開閉しにくいドアや窓があれば、場所と状態をメモする。
- 過去の点検報告書、修繕履歴、図面をまとめて保管する。
- 家具を固定し、寝室や出入口に倒れやすい家具を置かない。
- 避難経路や、自宅周辺の危険箇所を家族で確認する。
平時の写真や記録は、地震後に「以前と変わったか」を確認する材料になります。ただし、比較写真がなくても、異常を感じた場合は早めに相談してください。

8.AI住宅診断は、気になる点を整理する補助として
家メンテのAI住宅診断は、住まいの状態について気になる点を整理し、相談のきっかけをつくるために活用できます。
ただし、回答に基づく結果だけで、地震後の建物・擁壁・地盤の安全性や、居住を続けてよいかを判断することはできません。耐震診断や応急危険度判定、現地での専門調査に代わるものではありません。
新しい傾き、大きなひび割れ、擁壁の変形、漏水などがある場合は、AI住宅診断の結果を待たず、安全確保と専門家への相談を優先してください。
9.よくある質問
Q.液状化が疑われる砂や地面の隙間は、自分で埋めてもよいですか?
地面の沈下や亀裂、砂や水が噴き出した跡がある場合は、まず周囲への立ち入りを控えてください。安全な場所から記録できる場合は写真を残し、埋め戻しなどを行う前に、自治体や地盤の専門家へ相談しましょう。
Q.ひび割れが地震によるものか、以前からあったものか分かりません。
見た目だけでは断定できません。以前の写真があれば比較し、発見した日、場所、周囲の変化を記録してください。ひび割れが大きい、ずれがある、傾きなども生じている場合は早急に相談しましょう。
Q.震度いくつから点検したほうがよいですか?
震度だけで一律に判断することはできません。揺れの強さや長さ、建物の構造・築年数、地盤の状態などで影響は変わります。強い揺れを感じたときや、地震前と違う変化があるときは、安全を確保したうえで確認・相談してください。
Q.ビー玉が転がったら、家が傾いているのでしょうか?
床材の凹凸や局所的な不陸でも転がるため、それだけでは建物全体の傾きは判断できません。地震後に転がり方が変わった、複数の建具が急に閉まりにくくなったなどの変化があれば、専門的な計測を依頼しましょう。
Q.擁壁の点検も、通常の住宅診断で確認できますか?
依頼先や調査内容によって異なります。目視で変状を確認できても、構造的な安全性や地盤の状態を評価するには、別の専門調査が必要な場合があります。相談時に「擁壁や造成地も確認したい」と伝えてください。
10.まとめ|地震後は「安全確保・記録・相談」を
横浜市で造成地や擁壁のある家にお住まいの場合は、地震後に建物だけでなく、地面や擁壁の変化にも注意することが大切です。
- 危険を感じたら、点検より避難と安全確保を優先する。
- 擁壁やブロック塀には近づかず、離れた場所から確認する。
- 基礎・外壁・建具などの変化を、無理のない範囲で記録する。
- セルフチェックやAI住宅診断だけで、安全性を判断しない。
- 新たな異常があれば、建物・擁壁・地盤それぞれに適した専門家へ相談する。
家メンテでは、住まいの点検・メンテナンスに関するご相談を承っています。地震後に気になる変化がある場合は、状況をお聞かせください。
お電話でのご相談:0120-688-822
※倒壊や落下、火災などの差し迫った危険がある場合は、通常のお問い合わせよりも、避難や緊急通報を優先してください。
参考情報
- 横浜市「既存擁壁を中心としたがけ対策の強化」
- 横浜市「被災建築物応急危険度判定制度」
- 横浜市「被災宅地危険度判定制度」
- 国土交通省「宅地擁壁について」
- 国土交通省「新耐震基準の木造住宅の耐震性能検証法の公表について」
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