この記事を書いた人

高島 比呂人
住宅メンテナンス診断士
建築設計の専門学校を卒業後、長年建築業界に携わってきた高島です。戸建てを中心に様々な建物に関わる中で、安全で安心できる住まいの大切さを実感してきました。その経験を活かし、ホームインスペクションでは建物の細部まで丁寧にチェックし、専門知識に基づいた分かりやすい解説を心がけています

「夏は2階が暑くてエアコンが効きにくい」
「冬になると床が冷たい」
「冷暖房を使っているのに、なかなか快適にならない」

こうした住まいの悩みには、住宅の「断熱性能」が関係していることがあります。

特に9月は、夏の暑さによる住みにくさを実感した直後であり、これから冬の寒さに備える時期でもあります。

断熱は夏だけ、冬だけの対策ではありません。

今回は、戸建て住宅に使われる断熱材の役割や種類、断熱性能が低下する原因、断熱リフォームを考える際のポイントについてわかりやすく解説します。


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目次

そもそも「断熱材」とは?

断熱材とは、住宅の内側と外側の間で起こる「熱の移動」を抑えるための建材です。

冬は室内の暖かい空気を外へ逃がしにくくし、夏は屋外から入ってくる熱の影響を抑えます。

イメージとしては、住宅を包む「魔法瓶」のようなものです。

断熱性能が適切に確保されている住宅では、外気温の影響を受けにくくなるため、冷暖房を効率よく使用しやすくなります。

一方、断熱性能が不足していたり、断熱材に隙間や劣化が生じていたりすると、

  • 夏は2階や室内が暑い
  • 冬は床や壁際が冷える
  • エアコンの効きが悪い
  • 部屋ごとの温度差が大きい
  • 結露が発生しやすい

といった問題につながることがあります。


9月は住まいの「断熱」を考えるタイミング

まだ暑さが残る9月。

「今年の夏も家の中が暑かった」と感じた方は、一度住まいの断熱について考えてみてもよい時期です。

特に戸建て住宅では、屋根や天井が日射の影響を受けるため、

「1階は大丈夫なのに2階だけ暑い」
「夕方になっても2階に熱がこもっている」

といった現象が起こることがあります。

さらに、これから気温が下がってくると、今度は

「床が冷たい」
「窓際が寒い」
「暖房をつけても部屋が暖まりにくい」

といった冬特有の悩みが現れてきます。

夏の暑さと冬の寒さ。

一見すると反対の問題ですが、どちらにも住宅の断熱性能が関係している可能性があります。


断熱性能を高める3つのメリット

1.冷暖房効率を高め、省エネにつながる

断熱性能が高い住宅では、室内と屋外の熱の移動が抑えられます。

夏は外からの熱が入りにくく、冬は暖房で暖めた熱が外へ逃げにくくなるため、エアコンなどの冷暖房設備を効率的に使用できます。

「高性能なエアコンに交換したのに、なかなか部屋が快適にならない」という場合、設備だけではなく、建物側の断熱性能を確認することも重要です。

2.部屋ごとの温度差を抑えやすい

断熱性能が不足している住宅では、リビング・廊下・脱衣所・浴室など、場所によって大きな温度差が生じることがあります。

特に冬場の急激な温度変化は身体への負担になります。

住宅全体の断熱性能を高めることで、室内の温度差を小さくし、より快適な住環境をつくりやすくなります。

3.結露や住宅の劣化対策にもつながる

断熱は、単に「暑い・寒い」を改善するためだけのものではありません。

壁・床・天井などの表面温度が極端に低くなるのを抑えることで、適切な換気や防湿・気密対策とあわせて結露リスクを抑えることにもつながります。

結露や湿気が長期間続くと、カビや木材の腐朽など住宅の劣化につながる場合があります。

そのため断熱は、快適性だけでなく、住まいを長く維持していくうえでも重要な要素です。


戸建て住宅で使われる主な断熱材

断熱材にはさまざまな種類があります。

「どの断熱材が一番優れている」という単純なものではなく、施工する場所や住宅の構造、求める性能などによって適した材料が異なります。

グラスウール

ガラスを細い繊維状に加工した、住宅で広く使われている断熱材です。

比較的コストを抑えやすく、不燃性や吸音性にも優れています。

一方で、隙間やたるみが生じると本来の断熱性能を発揮しにくくなるため、適切な施工が重要です。

ロックウール

鉱物などを原料とした繊維系断熱材です。

断熱性能に加え、耐火性や吸音性にも優れているのが特徴です。

壁や天井など幅広い場所で使用されています。

セルロースファイバー

新聞紙などの木質繊維を利用した断熱材です。

細かな繊維を吹き込むため、複雑な部分にも充填しやすく、断熱性・吸音性などを備えています。

施工には専用の設備や技術が必要です。

硬質ウレタンフォーム

発泡プラスチック系の断熱材で、板状の製品のほか、現場で吹き付けるタイプもあります。

吹付け断熱では、柱や配管まわりなどにも施工しやすく、隙間を抑えやすいことが特徴です。

天井・壁・床下などさまざまな場所で使用されています。

発泡ポリスチレンフォーム

軽量で水分の影響を受けにくい発泡プラスチック系断熱材です。

EPSやXPSなどがあり、床・基礎・外張り断熱などで使用されています。

フェノールフォーム

薄くても比較的高い断熱性能を確保しやすい断熱材です。

主に板状の製品として、外張り断熱や壁、屋根などに使用されています。


重要なのは「断熱材の種類」だけではない

断熱材を選ぶ際に見落としたくないのが「施工状態」です。

どれだけ性能の高い断熱材を使っていても、

  • 断熱材に隙間がある
  • 必要な厚みが確保されていない
  • 一部がずれている
  • 湿気や水分の影響を受けている
  • 防湿・気密処理が適切ではない

といった状態では、本来想定されている性能を十分に発揮できないことがあります。

つまり住宅の断熱性能は、

「断熱材の性能」だけではなく「施工方法・厚み・気密・防湿・住宅全体の構造」

を含めて考えることが大切です。


断熱材はどこに入っている?

戸建て住宅では、主に次のような場所に断熱材が施工されています。

天井・屋根

夏の暑さ対策で特に重要な部分です。

屋根は強い日射を受けるため、その熱が小屋裏や室内へ伝わることで、2階が暑くなることがあります。

「夏になると2階だけ極端に暑い」という住宅では、天井・屋根部分の断熱状態を確認することも選択肢の一つです。

外壁

住宅の外周を囲むため、断熱性能に大きく関係します。

外壁リフォームを行うタイミングで、断熱改修を検討するケースもあります。

床下

冬場の「床が冷たい」「足元が寒い」という悩みに関係しやすい部分です。

床下に適切な断熱材を施工することで、床面から感じる冷えを抑えられる場合があります。

既存住宅では、床下から断熱材を施工する方法が選択できるケースもあります。


こんな症状があれば断熱状態を確認してみましょう

築年数が経過した住宅では、現在の住宅と比べて断熱性能が十分でないケースがあります。

また、断熱材が入っていても、施工状態や経年変化などによって本来の性能を発揮できていない場合もあります。

例えば、次のような状態が続いている場合は、一度住まい全体の状態を確認してみてもよいでしょう。

  • 夏になると2階が極端に暑い
  • エアコンをつけてもなかなか涼しくならない
  • 冬になると床が非常に冷たい
  • 暖房を止めるとすぐ寒くなる
  • 部屋によって温度差が大きい
  • 窓や壁に結露が発生しやすい
  • 床下の湿気やカビが気になる

ただし、これらの症状は断熱材だけが原因とは限りません。

窓の性能、日射、換気、気密性、屋根・外壁の状態、床下環境など、複数の要因が関係していることがあります。

「暑い・寒い」という住まいの悩みは、エアコンなどの設備だけが原因とは限りません。

天井や屋根、床下などの断熱状態によって、室内の温度環境が大きく変わることがあります。

「自宅の場合は、どこを断熱すればいいの?」
「断熱工事にはどんな方法があるの?」

そんな方に向けて、家メンテでは戸建て住宅の断熱対策について詳しくご紹介しています。

住まいの暑さ・寒さが気になっている方は、一度チェックしてみてください。

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断熱リフォームは「どこから改善するか」が重要

「家が暑いから断熱リフォームをしよう」と考えても、いきなり家全体を工事する必要があるとは限りません。

例えば、

夏の2階の暑さが大きな悩み
→ 天井・屋根の断熱を確認

冬の足元の冷えが気になる
→ 床下断熱を確認

窓際だけ暑い・寒い
→ 窓の断熱性能を確認

というように、現在の症状から原因を絞っていくことが大切です。

特に既存住宅の断熱リフォームでは、現在の住宅の状態を確認したうえで「どこを改善すると効果的なのか」を考えることで、必要以上に大きな工事を避けられる場合もあります。


断熱性能を表す「UA値」とは?

住宅の断熱について調べると「UA値」という言葉を目にすることがあります。

UA値(外皮平均熱貫流率)は、住宅の内部から外部へどの程度熱が逃げやすいかを示す指標です。

基本的には、数値が小さいほど熱が逃げにくく、断熱性能が高い住宅であることを表します。

ただし、実際の住み心地はUA値だけで決まるものではありません。

気密性、窓、日射遮蔽、換気、冷暖房設備、間取りなども関係するため、住宅全体で考えることが重要です。


これからの住宅では断熱性能がさらに重要に

住宅の省エネルギー化が進むなかで、断熱性能の重要性はこれまで以上に高まっています。

ZEH(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)などの省エネ住宅でも、太陽光発電などでエネルギーを「つくる」だけでなく、まず住宅そのものの断熱性能を高め、使用するエネルギーを減らすことが重要です。

これは新築住宅だけの話ではありません。

今住んでいる住宅についても、適切なメンテナンスや断熱リフォームを行うことで、住環境を改善できる可能性があります。


まとめ|暑かった夏のあとに、住まいの断熱状態を見直してみませんか?

断熱材は普段ほとんど目にすることがありません。

しかし、

  • 夏の暑さ
  • 冬の寒さ
  • 冷暖房効率
  • 室内の温度差
  • 結露や湿気
  • 住宅の維持管理

など、毎日の暮らしに深く関わっています。

特に夏の暑さを経験したばかりの9月は、「今年、家の中はどうだったか」を振り返るのにちょうどよい時期です。

「2階だけ異常に暑かった」
「エアコンの効きが悪かった」
「毎年冬になると床が冷たい」

そんな住まいのサインがある場合、単純に設備を交換するのではなく、まずは住宅の状態を確認することが大切です。

断熱材だけを見るのではなく、屋根・外壁・床下・基礎なども含めて住まい全体の状態を把握し、必要な場所に必要なメンテナンスを行う。

それが、これからも快適に住み続けるための第一歩です。

今年の夏、「家の中が暑かった」と感じた方は、冬の寒さが本格化する前に、住まいの断熱について一度確認してみてはいかがでしょうか。

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