【2025年版】住宅診断の全項目をプロが徹底解説!費用相場と信頼できる業者選びのポイント
マイホームの購入、特に中古住宅の取引では、「購入後に欠陥が見つかったらどうしよう…」という不安がつきものです。この不安を解消し、安心して取引を進めるために不可欠なのが「住宅診断(ホームインスペクション)」です。
本記事では、一級建築士の視点から、住宅診断の全貌を徹底的に解説します。調査項目の詳細なチェックリストから、費用相場、信頼できる業者の選び方まで、この記事を読めば住宅診断のすべてがわかります。後悔しない住まい選びのために、ぜひ最後までご覧ください。
そもそも住宅診断(ホームインスペクション)とは?
この章では、住宅診断の基本的な概念とその重要性について解説します。住宅診断がどのようなもので、なぜ必要なのかを理解することで、安心して次のステップに進むことができるでしょう。
建物状況調査との違いは?
住宅診断とよく似た「建物状況調査」。この二つは調査の目的と根拠法が異なります。簡単に言えば、建物状況調査は「法律で定められた最低限のチェック」、住宅診断は「より広範囲で詳細な、建物の健康診断」と捉えると分かりやすいでしょう。
住宅診断(ホームインスペクション)
- 目的:買主・売主の依頼に基づき、建物のコンディションを総合的に診断し、アドバイスを行うこと。
- 根拠:民間サービス
- 調査者:主に民間の住宅診断士(建築士など)
- 性質:任意
- 報告書:診断会社独自のフォーマット。写真や改善提案など詳細な場合が多い。
建物状況調査
- 目的:宅地建物取引業法に基づき、売買対象となる建物の基礎、外壁等の劣化・不具合状況を把握すること。
- 根拠:宅地建物取引業法
- 調査者:国が定めた講習を修了した既存住宅状況調査技術者(建築士)
- 性質:任意(ただし、不動産会社は媒介契約時に説明・斡旋の義務あり)
- 報告書:国土交通省の定める標準的な様式に準拠。
買主がより安心して購入判断をするためには、網羅性の高い住宅診断の実施が推奨されます。
住宅診断は義務?任意?2018年の法改正を解説
「住宅診断は義務になった」と聞いたことがあるかもしれませんが、これは正確ではありません。2018年4月の法改正で義務化されたのは不動産会社の対応であり、住宅診断の実施自体は依然として任意です。
- 媒介契約時:不動産会社は、建物状況調査の制度を説明し、売主・買主の意向を確認する書面を交付する義務があります。
- 重要事項説明時:不動産会社は、買主に対し建物状況調査の結果概要を説明する義務があります。
- 売買契約時:建物の現況を売主・買主が相互に確認し、その内容を記載した書面を交付する義務があります。
つまり、「不動産会社は、取引の際に住宅診断の選択肢を提示し、実施された場合はその結果を説明することが義務付けられた」ということです。
なぜ住宅診断が必要なのか?3つの大きな理由
任意であるにもかかわらず、住宅診断の必要性が高まっているのには、主に3つの理由があります。
- 専門家による客観的な建物評価建築の専門家が第三者の立場で診断することで、隠れた瑕疵(かし)や将来的なリスクを明らかにできます。「こんなはずではなかった」という購入後の後悔を防ぎます。
- 購入・売却判断の的確な材料診断結果は、その物件を購入すべきか、売却価格が妥当かを見極める重要な判断材料となります。修繕に多額の費用がかかることが判明した場合、価格交渉の根拠になります。
- 将来のメンテナンス計画と資産価値の維持報告書には、いつ頃、どこに、どのくらいの費用でメンテナンスが必要になるかの目安が示されます。適切なメンテナンスは、住宅の寿命を延ばし、資産価値を維持することにも繋がります。
【完全網羅】住宅診断の具体的な調査項目チェックリスト
この章では、住宅診断で実際にどのような箇所をチェックするのかを具体的に解説します。
最も重要な「基本構造部」の診断項目
建物の安全性と耐久性に直結する部分で、資産価値に大きな影響を与えます。
基礎
- ひび割れ(クラック):構造的な問題に繋がる可能性のあるひび割れ(幅0.5mm以上、深さ5mm以上など)がないか確認します。
- 鉄筋の露出:コンクリートが剥がれ、内部の鉄筋が露出(爆裂現象)していないか確認します。
- 沈下:レーザーレベル等の機器を用いて、建物が不自然に傾いていないか(不同沈下)を計測します。
柱・梁・床組
- 傾き・たわみ:柱の傾きや梁のたわみを水平器などで確認し、構造上の欠陥や耐震性を評価します。
- 接合部の状態:柱と梁をつなぐ金物の緩みや錆がないか確認します。
- シロアリ被害:木材の食害や蟻道(ぎどう)がないかを重点的にチェックします。
雨漏り・水漏れを見逃さない!「防水」に関する診断項目
建物の構造材を腐食させる雨漏りや水漏れは、建物を長持ちさせる上で非常に重要なチェック項目です。
屋根
- 屋根材の状態:瓦のひび割れ・ずれ、スレート屋根の色褪せ、金属屋根の錆などを確認します。
- 棟板金(むねばんきん):屋根の頂上にある板金の釘浮きやコーキングの劣化を確認します。
- 雨漏りの痕跡:小屋裏(天井裏)から、雨染みやカビ、野地板の腐食がないかを確認します。
外壁
- コーキング(シーリング):サイディングの継ぎ目や窓サッシ周りのコーキングのひび割れや剥がれを確認します。
- ひび割れ(クラック):外壁のひび割れの幅や深さを確認します。
- 塗装の劣化:塗装の剥がれや、手で触ると粉が付く「チョーキング現象」がないか確認します。
バルコニー
- 防水層の状態:床面の防水層に、ふくれ、ひび割れ、剥がれがないか確認します。
- 排水口(ドレン):ゴミや落ち葉による詰まりがないか、正常に排水されるかを確認します。
- 笠木(かさぎ):手すり壁の上部にある笠木の接合部から雨水が浸入していないか確認します。
【部位別】詳細な診断項目
外部
- 軒裏:雨染み、カビ、剥がれがないか。
- 雨どい:割れ、変形、外れ、詰まりがないか。
- 窓・サッシ:開閉はスムーズか、鍵やコーキングは正常か。
- 玄関ドア:開閉はスムーズか、ドアクローザーは正常か。
内部
- 壁・天井:雨漏りの染み、カビ、クロスの剥がれがないか。
- 床:床鳴り、きしみ、沈み、傾きがないか。
- 建具(室内ドアなど):スムーズに開閉できるか(家の傾きが原因の場合も)。
- 断熱材:(小屋裏・床下から)正しく施工されているか、カビなどがないか。
床下
- 土台・大引(おおびき):腐食やシロアリ被害がないか。
- 束(つか):床を支える束の傾きや錆がないか。
- 湿気・カビ:地面の湿気や木部のカビ、換気状況を確認。
- 給排水管:水漏れや著しい錆、腐食がないか。
- シロアリの道(蟻道):基礎や束の表面に蟻道がないか徹底的に確認。
小屋裏・天井裏
- 構造材:梁(はり)や垂木(たるき)に、割れ、たわみ、腐食がないか。
- 雨漏りの痕跡:野地板や垂木に雨染みやカビがないか。
- 断熱材:隙間なく敷かれているか、湿気で濡れていないか。
- 換気:小屋裏の換気が適切か、結露の痕跡がないか。
設備
- 水回り(キッチン、浴室など):蛇口からの水漏れ、排水の流れ、換気扇の動作を確認。
- 給湯器:正常に作動するか、異音や水漏れがないか、設置年数を確認。
- 換気設備:各部屋の換気扇や24時間換気システムが正常か。
(オプション)より詳しく知りたい場合の特別診断項目
- 赤外線カメラによる雨漏り・断熱材調査:目視ではわからない壁内部の温度差を可視化し、雨漏りや断熱欠損の箇所を特定します。
- 耐震診断:図面と現地調査を基に、大規模地震に対する強度を評価します。特に旧耐震基準(1981年5月以前)の建物に推奨されます。
- シロアリ調査:専門機材を使用し、より詳細にシロアリ被害の有無や予防効果を確認します。
住宅診断の費用相場と所要時間
住宅診断を依頼する際の費用と時間を把握し、計画を立てましょう。
基本的な調査の費用相場は5万円~7万円
- 一戸建ての目視を中心とした基本的な診断費用です。
- 料金には通常、現地調査(2~3時間)と写真付き報告書の作成が含まれます。
- 極端に安い料金の業者には、調査項目が少ない、リフォーム受注が目的などの可能性があるため注意が必要です。
マンションと一戸建ての料金の違い
- マンションは調査範囲が専有部分(室内)のみのため、一戸建てより安く、4万円~6万円程度が相場です。
- 一戸建ては室内、小屋裏、床下、外部(基礎、外壁、屋根など)と調査範囲が広いため、料金が高くなる傾向があります。
オプション調査の追加費用一覧
- 赤外線カメラ調査:2万円~5万円
- 耐震診断(一次診断):10万円~25万円
- シロアリ調査:1万円~3万円
- 給排水管内視鏡調査:3万円~8万円※上記はあくまで目安です。
調査にかかる時間は2~3時間が目安
一戸建ての基本的な診断で約2~3時間、マンションで約1.5時間~2時間が目安です。当日は診断士が集中できるよう、時間を確保しておくことが望ましいです。
知らないと損!住宅診断のメリット・デメリット
住宅診断は費用がかかりますが、それ以上に大きなメリットをもたらします。
【買主側】5つのメリット
- 隠れた欠陥や不具合の発見:契約前に建物の欠陥(瑕疵)や劣化状況を把握できます。
- 購入判断のための客観的な情報:感情に流されず、冷静に購入すべきかを判断できます。
- 修繕費用の事前把握:購入後の資金計画やリフォーム計画が立てやすくなります。
- 価格交渉の有力な材料:修繕費用を根拠に、売主へ価格交渉を行える可能性があります。
- 入居後の安心感とメンテナンス計画:建物の状態を把握して購入でき、大きな安心感が得られます。
【売主側】3つのメリット
- 物件の信頼性向上とスムーズな売却:物件の透明性が高まり、買主の不安が払拭されるため、早期売却につながりやすくなります。
- 契約不適合責任のリスク低減:事前に建物の状態を正確に告知することで、契約後のトラブルリスクを大幅に軽減できます。
- 適正な売却価格の設定:建物の状態を根拠に、適正な価格で売却活動を進められます。
デメリットと注意点
- 費用と時間の発生:5万円~7万円程度の費用と、調査や調整の手間がかかります。
- 重大な欠陥が発見された場合:買主が購入を断念する可能性がありますが、知らずに取引するよりは健全です。
- 売主が診断を拒否するケース:何か隠したい問題がある可能性も否定できず、慎重な検討が必要です。
- 診断の限界:非破壊検査が基本のため、壁の内部など全てを100%見通せるわけではありません。
いつ依頼するのがベスト?住宅診断の適切なタイミング
診断の効果を最大化するには、依頼のタイミングが非常に重要です。
中古住宅の場合:売買契約前が理想
「購入の申し込み後、売買契約を締結する前」がベストタイミングです。この段階なら、診断結果を基に購入の最終判断や価格交渉、契約条件への反映がペナルティなしで行えます。
新築住宅の場合:内覧会(引き渡し前)
「内覧会(竣工検査)」に住宅診断士に同行してもらうのがベストです。施工不良などを見つけた場合、引き渡し前に売主の責任で補修してもらえます。
自宅のメンテナンスの場合:築10年が最初の目安
- 品確法に基づく10年保証が切れるタイミングです。
- 給湯器などの設備機器が寿命を迎える時期です。
- 外壁や屋根のメンテナンスが必要になる時期です。これらの時期に診断を受けることで、適切な修繕計画を立てられます。
【失敗しない】信頼できる住宅診断会社の選び方5つのポイント
診断の品質は業者選びで決まります。信頼できる会社を選ぶための5つのポイントを紹介します。
- 「建築士」の資格を持っているか建物の専門家である「建築士(一級・二級・木造)」の資格保有者が担当するか確認しましょう。「既存住宅状況調査技術者」の資格もあれば、より信頼性が高いです。
- 第三者的な立場で客観的に診断してくれるか特定の不動産会社やリフォーム会社と提携しておらず、診断を専門に行う独立系の会社を選びましょう。「リフォーム工事は請け負いません」と明記している会社は安心です。
- 実績と口コミ・評判は十分かウェブサイトで診断実績(年間数百件以上が目安)を確認しましょう。GoogleマップのレビューやSNSなど、第三者のプラットフォームでの評価も参考にします。
- 詳細で分かりやすい報告書を作成してくれるか依頼前に必ず報告書のサンプルを確認してください。写真の多さ、具体的な指摘、分かりやすい言葉、総合的な評価、改善策の提案などが記載されているかチェックします。
- 万が一のための保険に加入しているか診断士の見落としに備え、会社が「住宅診断瑕疵保険」などの損害賠償保険に加入しているか確認しましょう。自社の品質に責任を持っている証でもあります。
住宅診断に関するよくある質問(FAQ)
Q. 自分で住宅診断はできますか?
A. 専門的な診断はプロに任せるべきです。表面的なチェックは可能ですが、構造部や雨漏り、シロアリ被害などの兆候を見抜くには専門知識と経験、機材が必要です。不正確な自己判断はリスクを高めます。
Q. 診断結果で欠陥が見つかったらどうすればいいですか?
A. まずは冷静に関係者と協議しましょう。選択肢は「売主に修繕を依頼する」「価格交渉を行う」「契約を白紙に戻す(契約前の場合)」などがあります。まずは不動産会社を介して、売主と協議の場を設けることが第一歩です。
Q. 診断中に立ち会いは必要ですか?
A. 必須ではありませんが、強く推奨します。その場で診断士に質問でき、自分の目で劣化状況を確認できるなど、報告書だけでは得られない多くのメリットがあります。
Q. 不動産会社が紹介する業者に頼んでも大丈夫ですか?
A. 第三者性を確認した上で、慎重に判断しましょう。紹介された業者に依頼する場合でも、独立系の診断専門会社か、資格の有無などを必ず確認してください。念のため自分で探した別の会社と比較検討する(相見積もり)ことをお勧めします。
まとめ:住宅診断は安心できる住まい探しの第一歩
本記事では、住宅診断の基礎知識から具体的な調査項目、費用、業者選びのポイントまでを網羅的に解説しました。
- 目的:専門家の目で建物の状態を正確に把握し、安心して取引を行うこと。
- 調査項目:構造部、防水、床下、小屋裏など多岐にわたる。
- 費用と時間:一戸建てで5~7万円、2~3時間が目安。
- メリット:買主は欠陥発見や価格交渉、売主はトラブル防止に繋がる。
- タイミング:中古住宅は「売買契約前」、新築住宅は「内覧会」がベスト。
- 業者選び:「建築士資格」「第三者性」「実績」「報告書の質」「保険」が重要。
住宅診断は、単なる「欠陥探し」ではなく、新しい生活を心からの安心と共にスタートするための「未来への投資」です。大切な資産である住まいの価値を正しく理解し、維持していくための「羅針盤」として、ぜひ住宅診断の実施を検討してみてください。