ベランダの無い住宅が増えている理由―現代の暮らしと住まいの変化を読み解く

近年、新築住宅を見ていると、ベランダが無い家が増えています。
以前は、どの家にもあるのが当たり前だったベランダ。
しかし、都市部を中心にその存在は大きく変わりつつあります。
「洗濯物はどこに干すの?」
「外に出られないのは不便じゃない?」
そんな疑問を持つ方も多いかもしれません。
実は、ベランダを設けない住宅が増えている背景には、 暮らし方の変化、建築基準や防水のリスク、家事スタイルの変化、コストや土地事情の影響 など、さまざまな理由が重なっています。
本コラムでは、ベランダのない住宅が増えている理由をわかりやすく解説し、「本当にベランダは必要なのか?」という判断の参考になる情報をお届けします。
1.かつては“必須設備”だったベランダ
ひと昔前、ベランダは住宅に欠かせない場所でした。
- 洗濯物を干す
- ふとんを干す
- ご近所とのコミュニケーションの場
- 夏の夕涼みやガーデニング空間
こうした用途から、多くの住宅が当たり前のようにベランダを設計していました。
しかし現代では、生活スタイルが大きく変わり、「ベランダを使わない家庭」も珍しくありません。
その結果、「ベランダなし住宅」は特別な選択肢ではなく、むしろ 合理的でメンテナンス性に優れた住宅 として見直されつつあります。
2.室内干し派の増加が最大の要因
●花粉・PM2.5・黄砂による外干し離れ
日本では春になると花粉が飛散し、洗濯物を外に干すと花粉が付着してしまいます。
さらに、PM2.5や黄砂など大気汚染物質も増えており、外干しを避ける家庭が増加しています。
その結果、
- 部屋干し
- 浴室乾燥機
- 衣類乾燥除湿機
- サーキュレーター併用乾燥
といった 屋内中心の洗濯スタイル が主流に近づいています。
●共働き世帯の増加で“外干しの手間”が合わない
共働きが当たり前になった現代では、日中にベランダに干すことが難しい家庭が増えました。
外干しは…
- 天気を気にする必要がある
- 急な雨への対応が難しい
- 夜取り込むのが危険または面倒
こうした理由から、ベランダを使わなくなる家庭が増えています。
●乾燥機の普及
乾燥機付き洗濯機やガス乾燥機などの登場によって、外干しの必要性が減少しました。 結果として、
「ベランダはあっても使わない」 → 「なら、最初からいらないのでは?」
という考え方につながっています。
3.防水・雨漏りリスクを避けたい人が増えている
ベランダは建物の中でも 雨漏りが発生しやすい部位 と言われています。
特に、以下のポイントが弱点です。
- 排水ドレンのつまり
- 防水層の劣化
- 立ち上がり部分からの浸水
- 手すり取り付け部の隙間
- サッシ廻りの施工不備
雨風に晒され続ける箇所のため、どうしても経年劣化が早く、
10~15年に1度、防水工事が必要 とされています。
ベランダを取り除けば、この防水メンテナンスが不要になります。
住宅の長寿命化や維持費削減を考える人が増えている今、これは大きなメリットです。
4.建築コストの上昇で「ベランダは削りやすい部位」になった
建設資材や人件費の高騰により、住宅の建築費は年々上がっています。
そんな中、限られた予算の中で取捨選択をする際、
- ベランダ(バルコニー)
- 屋根付きのルーフバルコニー
などは、比較的 コスト削減効果が高い部位 になります。
なぜなら、
- 防水工事
- 手すり
- サッシ
- 床材
- 排水設備
など、付随する工事が多いためです。
金額としては、数十万円〜100万円以上の削減になることもあります。
「使わない設備にお金をかけたくない」
この考え方からベランダを削減する家庭も増えています。
5.土地が狭い都市部で“室内空間を優先する”傾向
都市部では土地価格が非常に高く、コンパクトな敷地に家を建てるケースが多くなっています。
限られた面積で最大限の居住スペースを確保したいとき、
ベランダをなくすことで…
- 室内面積を広くできる
- 部屋の形をシンプルにできる
- 外壁の凹凸が減り耐久性も向上
というメリットが生まれます。 狭小地に建つ住宅ほど、
「屋内を広くしたい」
というニーズが強く、ベランダなし住宅が増える傾向があります。
6.ルール・条例の影響で“作れない場所”がある
都市計画区域や住宅密集地では、防火やプライバシーの観点から、ベランダやバルコニーに関する規制が厳しくなっている地域もあります。
たとえば、
- 隣家の窓と距離が近すぎる
- 敷地境界との距離が足りない
- 防火地域で制限がある
など、さまざまな理由でベランダを設けにくいケースがあります。
特に三階建て住宅では防火規制が厳しく、
“ベランダを作らず窓のみ”
という設計が増えています。
7.プライバシーの問題を避けられる
都市部で住宅が密集していると、ベランダに出るとすぐ隣家のベランダと目が合うこともあります。
- 洗濯物を見られたくない
- 人の気配を感じるのが嫌
- 生活音が気になる
このような声から、ベランダをあえてつくらず、
完全に室内で洗濯を完結させる暮らし
を選ぶ家庭が増えています。
8.台風・強風時の危険性が指摘されている
近年、台風や線状降水帯などの気象災害が増えています。
ベランダがあると…
- 飛来物が当たる
- 洗濯物や家具が飛ばされる
- 強風でガラスが割れる
- 排水が詰まり浸水の原因になる
といったリスクが高まります。
このため、災害に強い家を選びたいと考える人が増え、耐久性を優先してベランダを設けないケースも多くなっています。
9.マンションでは“ベランダNG行為”が増え使いにくい
近年のマンションでは、ベランダは共有部分扱いとなるため、使用に制限がかかります。
- 私物を置けない
- 喫煙禁止
- 防災上の理由で避難路を確保する必要
こうしたルールが増え、以前ほど自由に使えない現状があります。
一戸建てでも、こうした風潮の影響を受け、
「ベランダは使いにくい」
「それなら最初から作らず室内干しに」 という考え方が浸透してきていると言えます。
10.“インナーバルコニー”や“ランドリールーム”という新たな選択肢の登場
完全なベランダではないけれど、屋内外の中間のような空間をつくる家庭が増えています。
- インナーバルコニー(深い軒のある半屋外空間)
- サンルーム
- ランドリールーム(洗濯→干す→畳むを屋内で完結)
- 室内物干しスペース
- ホスクリーン(天井吊り物干し)
これらの設備が普及したことで、
「ベランダがなくても全く困らない」
という家庭が増えています。 特にランドリールームは共働き世帯に人気で、
“ベランダの代わりにランドリールームを設ける”
というプランが急増しています。
11.“ベランダなし住宅”のメリットとデメリット
◎メリット
- 雨漏りリスクが減る
- 防水工事のメンテナンス費用が不要
- 室内面積を増やせる
- 施工がシンプルで建築費を抑えやすい
- 洗濯動線を屋内で完結できる
- プライバシーが確保しやすい
- 外観がスタイリッシュになる
▲デメリット
- 外干しが好きな人には不便
- ガーデニング用途が制限される
- 子どもと軽く外に出る場所がない
- 火災時の避難経路が限られる可能性
ただし、最近は屋内設備の進化により、
デメリットが小さくなっているのが現状です。
12.ベランダを“つけるべきか迷う人”へのアドバイス
最後に、家づくりでベランダを迷っている方に向けてポイントをまとめます。
●ベランダが向いている家庭
- 洗濯物は外に干したい
- 日光にふとんを当てたい
- 家族が外に出られる小さな空間が欲しい
- ガーデニングを楽しみたい
●ベランダをなくす方が向いている家庭
- 室内干し中心の生活
- 共働きで日中家にいない
- メンテナンスコストを抑えたい
- 狭い土地で室内空間を広くしたい
- シンプルで災害に強い家にしたい
●迷ったときは“使用頻度”を考える
“使わないベランダ”ほど無駄なものはありません。
- 月に何回外干しする?
- 本当に外に出る?
- 掃除が面倒では?
- 防水のメンテナンスは?
こう考えていくと、答えが見えてきます。
ベランダがない住宅は「合理的な選択肢」へ
ベランダの無い住宅が増えているのは、単なる流行ではなく、
- 生活スタイルの変化
- 室内干しの普及
- 建築コストの上昇
- 雨漏りリスクの回避
- 土地事情
- プライバシー確保
- 住まいのメンテナンス性重視
といった複数の要因が複雑に影響しているためです。
そして今、ベランダは
「必須設備」ではなく「あると便利な選択肢」
へと変化しています。
自分の生活スタイルを見つめ直し、本当に必要かどうかをじっくり考えることが
後悔しない家づくりにつながります。
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