まだ家の売却は考えていないけれど、今のうちにしておくこと①

「いつか家を売るかもしれない」と考えたとき、その家の価値がご近所の似たような家よりも高かったら…
実はその差は、「まだ売却を考えていない今」、つまり日々の暮らしの中でちょっとした意識を持つだけで生まれるのです。
この連載では、「資産価値を維持する」という観点から、戸建住宅に長く住み続けるために、そして将来有利に売却するために、「今、何をすべきか」を全3回で具体的にお伝えします。
- 第1回:家を「資産」として考える。資産価値を守るための最初のステップとは?
住まいへの意識改革と、家の価値を決める「構造」の劣化を防ぐ基本的な考え方について、その重要性を深く解説します。
- 第2回:資産価値を維持するカギ!「定期的な住宅診断」と「予防的メンテナンス」の意識
屋根・外壁・基礎といった主要な構造をプロの目で定期的にチェックすること(住宅診断)の重要性と、劣化が軽微なうちに手を打つ「予防・未病」のメンテナンスが、将来の売却価格にどう影響するかを深掘りします。
- 第3回:履歴管理が未来の価値になる!手間をかけずに家の価値を高める仕組みづくり
専門業者による診断と修繕の履歴をしっかり残す「履歴管理」の重要性と、知識がない一般の方でも安心して資産価値維持に取り組める具体的な方法についてご紹介します。
1. 家を「マイホーム」から「資産」へ、意識をシフトしてみませんか?
ご自身の戸建住宅を、あなたはどんな風に捉えていますか?
多くの方にとって、「家」は家族が安心して暮らすための「マイホーム」であり、何にも代えがたい大切な場所でしょう。
家族の思い出が詰まり、安心感と幸福感を与えてくれる場所であるという認識は、もちろん間違いではありません。
しかし、もし将来「住み替え」や「相続」などでその家を手放す可能性があるなら、今日から少しだけ視点を変えてみることをおすすめします。それは、あなたの家を「マイホーム」という感情的な側面だけでなく、「重要な資産(不動産)」という経済的な側面からも捉え直すことです。
車や電化製品と同じように、家も年月とともに古くなり、価値は下がっていきます。
特に日本の不動産市場では築年数が経つと建物の価値が急速に下落し、最終的に「土地の価値のみ」と評価されるという慣習が根強く残っています。これは、もったいないことです。
適切な手入れと管理を行うことで、価値の下落スピードを緩やかにし、築年数が近い周辺の中古住宅と比較して、高い価値を維持することは十分に可能です。
資産価値の維持とは、将来、売却する際に「不利にならない」だけでなく、「有利になる」ための準備なのです。
「まだ売却なんて考えていない」という今だからこそ、その準備を始める絶好の機会です。
売却の直前に慌ててリフォームや修繕を行っても、根本的な構造の劣化は隠せませんし費用対効果も低くなりがちです。
今から計画的に行動することが、最も賢明な選択と言えます。
2. 日本の中古住宅の評価の現実と、資産価値を分ける「構造の健全性」
日本の住宅市場では、欧米諸国と比べて「中古住宅の評価」が低い傾向にあります。
欧米では、定期的なメンテナンスが行き届いた築年数の古い家でも、その履歴と質の高さが評価され価値が維持されることが一般的です。
一方、日本では、新築から20~30年で建物の価値がほぼゼロと見なされるケースが多く、市場の評価は主に「土地の価値」に左右されてきました。
しかし、近年、この認識は変わりつつあります。国も「長期優良住宅」の普及や「住宅診断(ホームインスペクション)」の義務化を通じて、「質の高い中古住宅は適正に評価されるべきだ」という方向へ舵を切っています。
この流れの中で、中古住宅の「建物の価値」は、単なる築年数だけで決まるものではなくなってきています。
では、何が評価の決め手になるのでしょうか。
建物の価値は、主に以下の3つの要素で評価されます。
- 立地・周辺環境(不変の要素): 交通の便、学区、商業施設の近さなど、土地に依存する要素。
- 内装・設備(修繕可能な要素): キッチン、風呂、壁紙など、リフォームで更新できる要素。
- 構造の健全性(最も重要な要素): 家を支える骨格(躯体)の耐久性や、雨水の侵入を防ぐ防水機能の状態。
この中で、買い手が最も気にし、評価に大きく影響するのは、間違いなく3つ目の「構造の健全性」です。
内装がどんなにきれいにリフォームされていても、屋根裏や床下といった見えない構造部分に雨漏りやシロアリ被害といった重大な欠陥があれば、買い手は「修繕に高額な費用がかかる」と判断し、一気に評価額は下がってしまいます。
逆に築年数が経っていても、主要な構造が定期的なメンテナンスによって健全に保たれていれば築年数の割に高い評価を得ることが期待できます。
3. 家の寿命と価値を左右する「主要な躯体」とは?
家の構造の健全性を守ることは、家の「健康寿命」を延ばすことと同義です。
家の耐久性を支える根幹となる主要な躯体は、一般の方が日常的にチェックするのが難しい場所ばかりです。
具体的に、資産価値を維持するために、定期的なチェックが必要な主要な躯体を見ていきましょう。
| 構造部位とその役割 | 劣化を放置した場合のリスク |
| 屋根・屋根裏:雨水侵入を防ぐ最後の砦。 | 雨漏りが発生し、柱や梁といった構造材を腐らせる。カビの発生、断熱材の性能低下を招きます。 |
| 外壁(外装):外部からの雨水や紫外線、風を遮断する保護膜。 | 表面のひび割れ(クラック)から水が浸入し、家の構造体や断熱材を濡らし、建物の耐久性を低下させます。 |
| 基礎・床下:家の土台であり、湿気やシロアリの被害を受けやすい場所。 | 基礎のひび割れによる強度低下、湿気による木材の腐朽、シロアリによる柱の食害(最悪の場合、倒壊リスク)があります。 |
| ベランダ・バルコニー:防水層が劣化しやすく、雨水が内部に入りやすい部分。 | 躯体への水侵入による腐食や、室内への雨漏りを引き起こします。 |
これらの部位は、新築から数十年経つと、見た目には大きな変化がなくても、防水性能や構造材の強度が徐々に低下しています。
特に、屋根裏や床下はご自身で見て回ることは困難であり、異変に気づいた時には手遅れになっていることが少なくありません。
資産価値を維持するための最初のステップは、これらの「主要な躯体」が家の健康と価値の要であることを認識し、「自分の目ではなく、専門家の目で定期的に監視してもらう必要がある」という意識を持つことです。
4. 劣化は「突然」起こるわけではない!早期発見・早期対処の重要性
家の劣化は、ある日突然、大規模な雨漏りや倒壊の危機となって現れるわけではありません。
それは、最初は非常に小さなサインから始まります。例えば、
- 外壁のコーキング材に、肉眼ではほとんどわからない程度の細いひび割れが入る。
- 屋根瓦の隙間に、わずかに土埃がたまり、水はけが悪くなり始める。
- 床下に湿気がこもり、目立たない木材の表面にカビが発生し始める。
これらの「初期のサイン」は、専門家が見れば「将来のトラブルの兆候」として認識できますが、「まあ、まだ大丈夫だろう」と見過ごされがちです。
資産価値を大きく下げるのは、この「初期のサイン」を放置してしまうことです。
放置された小さなひび割れは、雨水の侵入路となり、内部の構造材を腐食させ、断熱材の性能を下げます。
腐食した木材はシロアリにとって格好の餌となり、被害は急速に拡大します。
その結果、以下のようになります。
- 資産価値の下落: 売却時に重大な瑕疵(欠陥)として見なされ、大幅な価格交渉の材料となる。
- 高額な修繕費: 軽微な補修で済んだはずが、構造材の入れ替えや大規模な防水工事が必要になる。
- 建物の寿命短縮: 構造そのものが傷むことで、家の耐久性が根本的に失われる。
重要なのは、劣化がひどくなる前に、費用も安価で済む「予防・未病」の意識で早めに対処することです。
予防的な措置にかけた費用は、「その時に必要だった経費」ではなく、「将来、高額な修繕費と売却時の減額査定を防ぐための投資」として捉えるべきです。
5. 知識がないからこそ、専門家に「定期的なチェック」を任せるという選択
「家のことは素人だから、どこが傷んでいるのか分からない」という不安は当然のものです。
一般の住まい手の方が、屋根に登って瓦の状態をチェックしたり、基礎や床下に入って湿気やシロアリの痕跡を詳細にチェックしたりするのは、危険な上、専門的な知識がないと正確な判断はできません。
だからこそ、資産価値を維持するための最初のステップ、つまり「構造の健全性を定期的に把握する」という役割を、専門的な知識と道具を持つプロに任せるという選択が賢明になります。
これは、病気になってから病院に行くのではなく「健康診断」を定期的に受けるのと同じ考え方です。
- 素人目線での点検: 見た目に明らかな雨漏りや破損など、既に重大な問題が発生してからしか気づけない。
- プロの診断(住宅診断): 専門の機材(サーモグラフィーや含水率計など)を用いて、目に見えない初期の劣化や、水分の侵入箇所など、資産価値を下げる前の「未病」の状態を発見できる。
このプロによる定期的なチェックこそが、資産価値を失わないための防御壁となります。
専門家が作成した診断報告書は、現状の家の健康状態を客観的に示す唯一の資料であり、将来売却する際にも「この家は専門家のお墨付きを得て管理されてきた」という強力な証明となり得ます。
まだ家の売却を考えていない今だからこそ、専門家に「あなたの家の健康管理」を委託しその状態を記録していくという仕組みづくりを始めることが、最も価値のある行動なのです。
続く第2回では、資産価値を守るための具体的な行動「定期的な住宅診断」の真の価値について
第1回では、家を「資産」として捉え直し、構造の健全性が売却価値を大きく左右すること、そして早期発見の重要性をお伝えしました。
続く第2回では、資産価値を守るための具体的な行動、「定期的な住宅診断」の真の価値に迫ります。
特に劣化してから直すのではなく、早期に手を打つ“予防・未病”のメンテナンスが、どうして将来の売却で有利に働き、経済的なメリットを生み出すのかを、より詳しく掘り下げて解説します。
第2回は下記をクリックしてください。
まだ家の売却は考えていないけれど、今のうちにしておくこと②
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