【家の終活】知っておくべき4つの秘訣 ④遺言書の作成

遺言書の作成と「資産の明確化」がもたらす円滑な売却
法的な準備が「家」の未来を担保する
「家の終活」の締めくくりは、法的な準備、すなわち「遺言書の作成」です。
「うちは家族仲が良いから大丈夫」「まだ早い」と考える方もいますが、人生最大の資産である不動産が絡む相続においては、遺言書の有無がその後の売却プロセス、ひいては資産価値の保全に絶大な影響を与えます。
遺言書作成の目的は、単に家族間の争いを防ぐことだけではありません。それは、「この家を誰が、どのような状態で、どのように引き継ぐか」を明確にし、その後の売却や活用を極めて円滑に進めることにあります。
これまでの3回で築き上げてきた「家の管理履歴」という価値を、無事に次の世代や市場に引き継ぐための最終防衛ラインとも言えます。
1. 遺言書がない場合の不動産売却リスク
遺言書がない場合、不動産は法定相続人全員による「共有財産」となります。
この状態がその後の不動産売却において、予期せぬ大きなリスクと手間を生み出します。
1-1. 売却手続きの長期停滞と中断
① 名義変更(相続登記)の困難さ
不動産の売却を進めるには、まず所有者名義を亡くなった方から相続人へと変更する「相続登記」が必要です。遺言書がない場合、この相続登記を行うために、法定相続人全員が参加し、遺産分割について話し合った結果を記した「遺産分割協議書」を作成しなければなりません。
相続人の中に「売却に反対」「自宅として使いたい」「提示された売却額に納得がいかない」という人が一人でもいると、協議が成立せず、手続きは長期にわたり停滞します。
遺産分割協議がまとまらない限り、不動産の名義は亡くなった方のままとなり、法的に売却を一切進めることができません。
② 相続人全員の同意が必要
たとえ遺産分割協議が成立したとしても、売却契約や重要な法的手続きの際には、相続人全員の実印や署名が都度必要になります。遠方に住んでいる、連絡が取りづらいなど手続きの障害となる要素が多いほど、売却活動は停滞します。
1-2. 不動産の価値低下(管理リスクの増大)
相続争いや手続きの停滞が長期化するほど、家は「空き家」となり、適切な管理が行き届かなくなります。
- 劣化の急速な進行: 誰も住まなくなり、定期的な通風や清掃が行われないと、家はあっという間に傷みます。第3回で触れたように、湿気によるカビ、害虫の発生、設備の故障などが短期間で急速に進行し、せっかく保全してきた管理履歴の価値を損ないます。
- 管理コストの増大: 家を放置していても、固定資産税や火災保険料などの維持費用は発生し続けます。また、地域によっては「空き家対策」として行政の指導対象となるリスクも発生します。
市場評価の低下: 買主は、長期の空き家や、相続でもめていると聞けば敬遠しがちです。
「問題のある物件」という烙印を押され、市場での評価(査定額)が大きく下がり、最終的に安値での売却を余儀なくされることになります。
2. 「遺言書」による円滑な資産承継と売却戦略
遺言書によって「誰に、どの不動産を、単独で相続させるか」が明確になっていれば、上記のリスクはほぼ回避できます。
2-1. スピーディな売却開始と決定権の明確化
単独の相続人が決まっていればその人が主導で速やかに名義変更を行い、滞りなく売却活動を開始できます。
売却価格や時期に関する決定権が明確になるため、市場の動向を逃さずに売却を進めることが可能です。
これにより、家を空き家にすることなく、適切な管理状態を保ったまま市場に出すことが可能となり築年数や管理履歴に基づく適正な市場評価を得やすくなります。
2-2. 「資産として引き継ぐ」ための指定
遺言書は、単に財産を分割するだけでなく、「資産価値を保全する」という意思を伝える重要な手段でもあります。
遺言書に「付言事項」として、家を大切にしてきた思いや、維持管理の重要性を記載しておくことが有効です。
(付言事項の例)「この不動産は、長年にわたり専門家による定期的な診断とメンテナンスが行われてきた価値ある資産であるため、相続人は、その価値を最大限に生かす形で活用・売却することを望む。
また、売却する際は、その管理履歴を証明する『家のカルテ』を活用し、適正な価格で取引することを強く望む。」
これにより、相続人もまた、その家が「管理を継続すべき資産」であることを認識し安易に放置したり、安値で手放したりすることを避け、プロの管理体制を引き継ぐモチベーションに繋がります。
3. 法的準備と「家の管理システム」の連携
遺言書の作成自体は弁護士や司法書士の領域ですが、「家の健康診断・保全・売却」までを総合的に担う管理システムを利用している場合、この法的準備においても大きな強みを発揮します。
3-1. 不動産専門家としての客観的情報の提供
遺言を作成する専門家に対し、その家の「現在の価値」「適切な管理履歴」「売却のポテンシャル」を最も正確に把握している情報を提供できます。
- 客観的な裏付け: 「家のカルテ」を基にした客観的な管理・修繕履歴を提供することで、家を「単なる古い建物」としてではなく、「履歴に裏打ちされた価値ある資産」として、より具体的な遺産分割案の立案をサポートできます。
- 売却戦略との連動: 遺言書で指定された相続人に対し、その後の売却戦略(いつ、どのように売るか)をスムーズに提案し、売却に必要なすべての書類と履歴情報をすぐに提供できる、途切れることのないサポート体制を構築できます。
遺言書作成と「家の管理履歴」の連携は、法的な円滑さと、市場での価値保全という、両輪の成功を保証するものです。
4. 遺言書作成の具体的な進め方
不動産という大きな資産を扱う場合、形式不備で無効になるリスクの少ない「公正証書遺言」を作成することが強く推奨されます。
- 財産と相続人の特定: 不動産(地番、家屋番号)や金融資産を明確にし、誰に何を相続させるかを決定します。
- 証人選定と公証役場での作成: 公証役場へ出向き、証人二人以上の立ち会いのもと、公証人が作成します。費用はかかりますが、最も安全性が高く、紛争を防ぐ確実な方法です。
この準備を、第1回から第3回で整理してきた「不動産情報」や「管理履歴」を参考にしながら進めることで、曖昧さのない、明確で実行力の高い遺言書を完成させることができます。
家の価値は「管理の履歴」と「承継の明確さ」で決まる
全4回の「家の終活」のステップを通じて見てきたように、最終的な成功(高値・円滑な売却)は、準備の質と継続性で決まります。
- 情報の整理: 「家のカルテ」の作成
- 撮影: 「管理の質」の可視化
- 家財整理: 隠れた劣化の発見と修繕
- 遺言書: 資産承継の明確化と売却プロセスの担保
そして、この全てを貫く核心こそ、「年に一度の住宅診断とその履歴管理」、そしてそれに続く「劣化が出る前の予防保全・メンテナンス」です。
戸建住宅の管理は、家主様の責任においてすべて行うのが現状の社会ですが、資産価値を守るためにはマンションのような継続的で専門的な管理システムが不可欠です。この管理システムによって得られた「管理の透明性」を持つ家は、将来的な売却市場において、圧倒的な優位性を保ち続けることでしょう。
ぜひ、人生最大の資産である「家」の健康管理と、未来への円滑な承継を、専門的な知見を持つ総合的なサポートシステムに委ねることを検討してみてください。
あなたの家を、未来に価値ある形でつなぐための最も賢明な選択となります。
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