あなたの家は今、大丈夫?「耐震診断」と「ホームインスペクション」の役割と違いを徹底解剖!

なぜ、家の「健康診断」が2種類あるの?

近年、中古住宅の購入や売却を検討する際、「建物の状態を事前に確認しましょう」という話を聞くことが多くなりました。特に不動産会社やメディアで頻繁に目にするのが、「ホームインスペクション」「耐震診断」という二つの言葉です。

どちらも「家の状態をプロに調べてもらう」という意味では共通していますが、実はこの二つの診断は、目的、診断内容、そして知りたい情報がまったく異なります

例えるなら、「ホームインスペクション」は、病気の早期発見と体の調子を見るための「健康診断」
一方、「耐震診断」は、災害に対するポテンシャルを測るための「体力測定」のようなものです。

この違いを理解せずに家を選んでしまうと「診断を受けたから安心だ」と思っていても、実は地震に対する備えができていなかったり、逆に「耐震性はバッチリ」でも水回りや屋根の劣化が激しく、すぐに多額の修繕費用がかかる家を選んでしまったりする可能性があります。
本コラムでは、これからの住宅選びで不可欠となる「耐震診断」と「ホームインスペクション」の違いを徹底的に整理し、二つの診断が私たちの安心な暮らしにどう役立つのかを詳しく解説していきます。

ホームインスペクション:家の劣化や不具合を見つける「総合健康診断」

(1)定義と目的:「見た目ではわからない」をクリアにする

ホームインスペクションとは、英語の Home Inspection をそのまま日本語にした言葉で、住宅の専門家が、建物の劣化状況や不具合の有無、そして将来の改修の必要性などを、客観的に評価するための住宅診断です。

その最大の目的は、「住宅の現状の健康状態を正確に把握すること」

特に中古住宅の場合、外から見てきれいでも、屋根裏や床下に雨漏りの跡が隠れていたり、給排水管が老朽化していたりなど、「見た目ではわからない欠陥」や「老朽化による不具合」が潜んでいることが少なくありません。
ホームインスペクションは、こうした情報格差を解消し、購入者が安心して住宅を選べるようにするための仕組みなのです。

この診断結果は、次のような場面で重要な役割を果たします。

  1. 購入判断の材料:この家を買うべきか、価格交渉の余地はあるかを判断する。
  2. 修繕計画の策定:引き渡し後に必要となる修繕やリフォームの費用とスケジュールを見積もる。
  3. 売買時のトラブル防止:売主・買主双方で、建物の状態を事前に共有し、将来的な「言った、言わない」の紛争を防ぐ。

(2)調査の範囲:構造から設備まで、建物の「体全体」をチェック

ホームインスペクションの調査範囲は、建物全体に及びます。専門家は、人間でいう「五感」と専用の測定機器を使って、建物を傷つけずに状態を確認していきます。

主にチェックされるのは、以下のような項目です。

  • 構造部の安全性:基礎のひび割れ、柱や梁の目視による損傷、建物の傾きがないか。
  • 雨漏りリスク:屋根、外壁、ベランダ、窓周りなどに、ひび割れや剥離、変色などの雨水の侵入痕がないか。
  • 湿気と害虫のリスク:床下や屋根裏に、シロアリ被害や木材の腐朽(腐れ)がないか。
  • 設備の状態:給排水設備、電気設備、換気システムなどが正常に機能しているか。
  • 内装・建具:床のたわみ、ドアや窓などの開閉に不具合がないか。

調査の基本は「非破壊検査」、つまり、建物を壊したり、部材を取り外したりすることは原則としてありません。
目視で確認できる範囲と、専用の水分計やレーザー測定器などの簡易的な機器測定によって、建物の状態を総合的に評価します。

(3)法的位置づけ:中古住宅流通の「常識」へ

日本においてホームインスペクションが注目され、定着しつつある背景には、2018年4月に施行された宅地建物取引業法(宅建業法)の改正があります。

この改正により、不動産会社は中古住宅を売買する際、売主と買主の双方に対して、「ホームインスペクションを実施するかどうかを説明し、意向を確認すること」が義務化されました。
これにより、ホームインスペクションは、中古住宅市場において建物の状態を「見える化」し、取引の透明性を高めるための重要なインフラとして機能し始めているのです。

耐震診断:災害に対する強さを測る「体力測定」

次に、ホームインスペクションとは一線を画す専門性の高い診断、耐震診断について見ていきましょう。

(1)定義と目的:命を守るための安全性評価

耐震診断とは、「地震が発生した際に、その建物がどの程度の揺れに耐えられるか」を科学的、工学的に評価するための調査です。

その目的は非常に明確で、「その住宅が地震時に倒壊したり、住めないほどの大破をしたりする危険性がないか」を確認し、住む人の命を守れる構造であるかを評価することにあります。

特に、1981年(昭和56年)5月以前に建築された、いわゆる「旧耐震基準」の建物に対しては、耐震診断を受けることが強く推奨されています。これは、旧耐震基準が想定していた地震の揺れが、阪神・淡路大震災や熊本地震などで確認された巨大地震の揺れに比べて小さかったためです。

(2)診断内容:図面と計算による精密な構造解析

耐震診断は、ホームインスペクションのような「目視による劣化チェック」が中心ではなく、建物の構造を数値で分析する精密な工学的な調査が中心となります。

診断プロセスでは、主に以下の要素が評価されます。

  1. 図面調査・現地測定:建築当時の図面や、現地での正確な寸法測定を行い、建物の構造を把握します。
  2. 構造部材の強度評価:基礎、柱、梁などの構造材が、現在の建築基準法レベルの強度を持っているかを評価します。
  3. 耐力壁の評価:地震の揺れに抵抗する「耐力壁」が、必要な量だけ、かつバランスよく配置されているかを分析します。
  4. 建物の重量と形状:屋根や床の重さ、建物の形状(凹凸や偏りの有無)など、地震時に建物に加わる力を増減させる要素を計算します。
  5. 劣化の考慮:ホームインスペクションで発見された、構造材の腐朽やシロアリ被害といった劣化が、耐震性能に与える影響を数値として加味します。

これらの要素を総合的に分析・計算し、最終的に建物の耐震性能は「Isu値(耐震性の指標)」という数値で評価されます。
この数値に基づいて、「倒壊の可能性が高い」「やや危険」「一応安全」といったランクで安全性が示されます。

(3)専門的な実施者と自治体の支援

耐震診断は、建物の構造と力学に関する高度な専門知識が不可欠であるため、建築士(一級・二級・木造建築士)、特に「耐震診断士」などの専門資格を持つ国家資格者が行います。 また、耐震化は国全体の重要な課題であるため、多くの自治体が耐震診断の支援制度を設けています。旧耐震基準の木造住宅など、条件を満たせば「無料で耐震診断を受けられる」場合や、診断の結果、耐震補強が必要と判断された場合に改修工事に対する補助金が支給されるケースもあります。

4つの視点で徹底比較:診断の目的と手法の違い

ホームインスペクションと耐震診断は、同じ「建物の調査」というカテゴリにありながら、その目的、方法、そして結果の活用方法に決定的な違いがあります。

視点1:診断の目的に関する違い

住宅の健康診断であるホームインスペクションと、建物の体力測定である耐震診断は、それぞれ「何を知りたいか」という目的が根本的に異なります。

まず、ホームインスペクションが焦点を当てるのは、「建物の現在の健康状態」です。この診断の目的は、雨漏りやシロアリ被害、設備の故障といった、今、あなたの家が抱えている劣化や不具合のリスクを明らかにすることにあります。その結果は、中古住宅の価格交渉や、購入後のリフォーム・修繕計画を立てる際の経済的な判断材料として活用されます。要するに、ホームインスペクションは「建物の寿命や、これからかかる修繕コスト」に光を当てる調査だといえるでしょう。

これに対し、耐震診断の目的は、非常にシンプルで明確です。それは、「地震時に建物が倒壊しないか」という、生命の安全に関わる点を評価することです。この診断が知りたいのは、建物が巨大な災害に対して耐えられる構造かどうかであり、現在の水回りの故障などは基本的に評価対象外です。耐震診断の結果は、建物の安全性を確認した上で、もし危険性が認められた場合は、耐震改修計画や自治体の補助金申請を進めるための技術的な根拠となります。

まとめると、ホームインスペクションは「暮らしの快適さとコスト」という現在のリスクを洗い出すためのもの。
そして、耐震診断は「家族の命を守る強さ」という、災害に対するポテンシャルを測るためのものなのです。

視点2:調査方法に関する違い

ホームインスペクションでは、建物を傷つけない目視や簡易な機器による非破壊検査が基本です。建物にダメージを与えずに、短時間で広範囲の劣化状況を把握します。

一方、耐震診断では、建物の図面や構造を詳細に分析する構造計算や、壁の強度を調べるための現地測定が必要となります。より精度の高い診断を行うためには、一部の部材を取り外して、柱や壁の内部構造を確認する破壊検査が必要となる場合もあります。

視点3:調査範囲に関する違い

  • ホームインスペクション:建物全体、つまり基礎、外壁、屋根、室内、そして給排水などの設備といった、建物の機能すべてが対象です。
  • 耐震診断:評価の対象は、構造体(基礎、柱、梁、耐力壁など)に特化しています。雨漏りや設備の故障などは、耐震性能に影響を与える場合に限って考慮されますが、詳細な劣化チェックは主目的ではありません。

ホームインスペクションは「広くて浅い(総合的)」、耐震診断は「狭くて深い(専門的)」と考えると分かりやすいでしょう。

視点4:コストと時間に関する違い

ホームインスペクションは、簡易診断であれば数万円から10万円程度で、所要時間は2〜3時間程度で完了します。
一方、耐震診断は、詳細な構造計算や図面調査が必要となるため、費用は10万円から30万円程度(建物の規模による)となり、調査から報告書の作成まで数日〜1週間以上を要することが一般的です。
これは、専門的な工学計算に時間と高度な技術が必要となるためです。

両者の関係性:安全と快適を両立させる組み合わせ

ホームインスペクションと耐震診断はそれぞれ独立した診断ですが、現代の住宅を総合的に評価する上で、相互補完的な切っても切り離せない関係にあります。

診断を組み合わせる実践的なメリット

1. 耐震診断の精度向上

耐震診断は、建物の構造的な強さを計算しますが、その計算に「建物の劣化度」を加味する必要があります。

例えば、ホームインスペクションで「床下にシロアリ被害がある」「柱の根元に腐朽が見られる」といった重大な劣化が発見された場合、その情報は耐震診断の結果にマイナス要素として大きく影響します。
事前にホームインスペクションを行うことで建物の現状の劣化状況を把握し、より現実的で正確な耐震性能の評価を行うことができるのです。

2. 効率的な修繕計画の立案

中古住宅を購入する場合、最も理想的なのは、「安全性の向上(耐震補強)」と「快適性の向上(断熱・設備リフォーム)」を同時に行うことです。

  • 耐震診断:「どこに」「どれくらいの壁」を補強すれば安全になるかを教えてくれる。
  • ホームインスペクション:「どこから雨漏りしているか」「どの設備がすぐに壊れるか」を教えてくれる。

この二つの情報があれば、「耐震補強のために壁を剥がすタイミングで断熱材を入れ替え、給排水管も交換する」というように、無駄なく効率的かつ合理的なリフォーム計画を立てることが可能になります。


6. 中古住宅購入時の「賢い」診断の流れ

中古住宅を検討する際、特に築年数が古い建物(旧耐震基準の建物や築20年以上の建物)を購入する場合は、次のような流れで診断を依頼することが、失敗を防ぐ鍵となります。

ステップ1:売買前にホームインスペクションを実施

まず、購入の意思を固める前にホームインスペクションを依頼します。これは、「この家が今すぐ多額の修繕費用を必要とするか?」、「目に見えない大きな欠陥はないか?」という、現在のリスクとコストを把握するためです。

この結果、雨漏りやシロアリなどの重大な欠陥が見つかれば、価格交渉の材料としたり、購入そのものを再検討したりする判断が可能になります。

ステップ2:必要に応じて耐震診断を実施

ホームインスペクションの結果、基礎や主要構造部に大きな問題がなく、かつ旧耐震基準の建物であったり耐震性に不安を感じる場合は、詳細な耐震診断へ進みます。

自治体の助成制度が利用できるかを確認しつつ、耐震診断士に依頼し建物の「命を守る能力」を科学的に評価してもらいます。

ステップ3:二つの結果をもとに最終判断と計画策定

二つの診断結果が揃えば、「安全性のレベル」と「今後の修繕コスト」が明確になります。 この情報を基に、耐震補強とリフォームを組み合わせた「長期的に安全で快適な住まいづくり」の計画を立てて、最終的な購入の判断を下します。

「健康」と「体力」の二刀流で家を守る

耐震診断とホームインスペクションは、どちらも住宅の安心を支える重要なツールですが、その役割は異なります。

  • ホームインスペクション:住宅の劣化や不具合を調べる「総合的な健康診断」。現在の病気や不調、そして今後の修繕費を見通すために行います。
  • 耐震診断:地震に対する建物の強さを評価する「体力測定」。地震時に命を守れる構造になっているか、安全性を数値で測るために行います。

住宅を選ぶとき、あるいは今住んでいる家を長く大切にしたいと考えるとき、どちらか一つではなく、この二つの診断を適切に組み合わせることが、最も賢明な選択となります。 ホームインスペクションで建物の「現状と修繕コスト」を「見える化」し、耐震診断で「究極の安全性」を確保する。
この二つの視点が、これからの日本の住宅において、私たちに真の安心と資産価値をもたらしてくれる基本的な考え方となるでしょう。


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