リフォーム前のホームインスペクションは必須!後悔しないための全知識

この記事では、なぜリフォーム前のホームインスペクションが必須なのか、そのメリット・デメリットから費用相場、信頼できる業者の選び方まで、あなたが知りたい情報を網羅的に解説します。この記事を読み終える頃には、安心してリフォーム計画の第一歩を踏み出すための、具体的で実践的な知識がすべて身についているでしょう。


そもそも、リフォーム前のホームインスペクションとは?

この章では、リフォームの成否を分ける「ホームインスペクション」が具体的にどのようなもので、なぜリフォーム前に不可欠とまで言われるのか、その本質的な理由を解き明かします。

ホームインスペクション(住宅診断)の基礎知識

ホームインスペクションとは、住宅に精通した専門家(ホームインスペクター)が、第三者的な立場で住宅の劣化状況や欠陥の有無を診断し、改修すべき箇所やその時期、おおよその費用などのアドバイスを行う専門的なサービスです。人間が定期的に健康診断を受けるように、家も専門家によるチェックを受けることで、現在の「健康状態」を正確に把握することができます。

診断は、屋根や外壁、室内、小屋裏、床下といった普段目にしない場所まで、専門家の目で見て、触って、時には専門機材を使って行われます。この診断結果は、詳細な写真付きの報告書としてまとめられ、住宅の現状を客観的なデータとして理解するための重要な資料となります。特にリフォームを前提とした場合、この報告書が羅針盤となり、計画の精度を飛躍的に高めるのです。

なぜリフォーム前に専門家による診断が必要不可欠なのか

なぜ、リフォーム会社に任せるだけでなく、わざわざ第三者による診断が必要なのでしょうか。その最大の理由は「情報の非対称性」をなくすためです。リフォームを発注する私たち生活者は住宅の素人ですが、施工するリフォーム会社はプロです。この知識の差が、時として不利な状況を生み出す可能性があります。

例えば、リフォーム会社によっては、自社の利益を優先し、本来ならまだ補修の必要がない箇所まで工事範囲に含めたり、逆に、根本的な欠陥には触れずに表面的なリフォームだけを提案したりするケースも残念ながら存在します。

これに対し、利害関係のない第三者のホームインスペクターは、純粋に「その建物にとって何が最善か」という視点から診断を行います。特定非営利活動法人 日本ホームインスペクターズ協会(JSHI)も、住宅のコンディションを客観的に評価する第三者の重要性を強調しています。この客観的な診断結果を手元に持つことで、私たちはリフォーム会社と対等な立場で話し合いを進め、提案された工事内容が本当に必要なものなのかを冷静に判断できるようになるのです。

このように、ホームインスペクションは、大切な住まいと資産を守るための「お守り」のような役割を果たします。それでは次の章で、ホームインスペクションがもたらす具体的なメリットを詳しく見ていきましょう。


【結論】リフォーム前のホームインスペクションはやるべき!5つのメリット

この章では、ホームインスペクションを実施することで、佐藤さんのような慎重な方が得られる5つの具体的な経済的・精神的メリットを、具体的なデータや事例を交えて解説します。

1. 見えない建物の劣化状況や欠陥を正確に把握できる

最大のメリットは、普段の生活では決して気づくことのできない建物の隠れた問題点を可視化できることです。壁紙のシミや床のきしみなど、表面的な変化の裏には、深刻な問題が潜んでいる可能性があります。

具体的な事例として、壁紙の張り替えとフローリングの交換を計画していたAさんのケースを考えてみましょう。Aさんは工事前にホームインスペクションを依頼しました。その結果、壁内部で軽微な雨漏りが進行しており、断熱材が湿り、柱の一部に初期の腐食が見つかったのです。もしインスペクションをせずに表面的なリフォームだけをしていたら、数年後には大規模な修繕工事が必要になっていたかもしれません。

国土交通省が発表した「既存住宅インスペクション・ガイドライン」に関連する調査データによれば、インスペクション実施物件の約6割で何らかの劣化事象(外壁のひび割れ、屋根の劣化、給排水管の不具合など)が発見されています。この事実は、専門家による診断がいかに重要かを示しているでしょう。これにより、問題の根本原因にアプローチする、真に価値のあるリフォーム計画へと修正できるのです。

2. リフォームすべき箇所の優先順位が明確になる

リフォームを考え始めると、「キッチンも新しくしたいし、お風呂も…外壁の汚れも気になる」と、やりたいことが次々に出てきて予算との兼ね合いに悩むことはありませんか。ホームインスペクションは、そんな悩みを解決する客観的な判断基準を提供してくれます。

診断報告書では、各劣化事象について「緊急性が高い」「経過観察が必要」「今すぐの対応は不要」といった形で評価が示されます。例えば、「構造部分に関わる基礎のひび割れ」と「デザイン上の問題である内装の傷」では、どちらを優先すべきかは明らかです。専門家による客観的な評価があることで、「今すぐやるべきこと(Must)」と「いずれやりたいこと(Want)」を冷静に仕分けることができ、限られた予算を最も効果的な箇所に投下できるようになります。

3. リフォーム工事の追加費用リスクを軽減できる

リフォームで最も避けたい事態の一つが、工事が始まってから問題が見つかり、「追加工事で費用が100万円かかります」と言われるような想定外の出費でしょう。実際に、リフォーム経験者を対象としたある調査では、約3割の人が「追加工事による予算オーバー」を経験したと回答しています。

このリスクを大幅に低減できるのが、事前のホームインスペクションです。工事前に床下や壁の内部、屋根裏などの状態を把握しておくことで、リフォーム会社はより正確な見積もりを作成できます。例えば、床下の湿気対策やシロアリ被害の補修、壁内部の断熱材の補充など、潜在的なリスクをあらかじめ工事計画と見積もりに織り込んでおけるため、「工事が始まってから発覚」という事態を未然に防ぐことが可能です。これは、精神的な安心感にも繋がりますね。

4. リフォーム会社の見積もりの妥当性を判断しやすくなる

複数のリフォーム会社から見積もり(相見積もり)を取ることは、適正価格を把握する上で非常に重要です。しかし、各社の提案内容や見積もり項目がバラバラで、何を基準に比較すれば良いか分からない、という壁にぶつかりがちです。

ここで、ホームインスペクションの診断報告書が強力な武器となります。この報告書を各社に提示し、「この指摘事項を改善するための見積もりを出してください」と依頼することで、全社が同じ条件で見積もりを作成することになります。これにより、提案される工法や材料、費用の違いが明確になり、純粋な技術力やコストパフォーマンスを比較検討しやすくなるのです。「A社は構造部の補強を提案しているが、B社は触れていないのはなぜか?」といった具体的な質問も可能になり、より深く納得感のある業者選定が実現します。

5. 建物の資産価値を維持・向上させることにつながる

定期的なメンテナンスと適切なリフォームは、住宅の寿命を延ばし、その資産価値を維持・向上させるために不可欠です。ホームインスペクションは、そのための長期的な修繕計画を立てる上での基礎資料となります。

診断報告書には、建物の現状だけでなく、将来的にメンテナンスが必要になる可能性のある箇所やその推奨時期なども記載されています。この情報に基づき、計画的な修繕を行うことで、建物を常に良好なコンディションに保つことができます。また、将来的にその住宅を売却することになった際、ホームインスペクションの実施履歴とそれに基づく修繕履歴は、建物の健全性を示す客観的な証明となり、売却価格の向上や売却期間の短縮に繋がる可能性も十分に考えられます。

このように、多くのメリットがあるホームインスペクションですが、逆に実施しなかった場合、どのようなリスクが待ち受けているのでしょうか。次の章で、その恐ろしさを具体的に見ていきましょう。


やっておけばよかった…では遅い!実施しない場合の3つのデメリット

この章では、「費用がもったいないから」とホームインスペクションを省略した場合に、将来的に直面しかねない3つの深刻なリスクについて、具体的な失敗例を交えながら警鐘を鳴らします。

1. リフォーム後に構造上の欠陥が発覚するリスク

これが最も恐ろしいシナリオと言えるでしょう。見た目をきれいにするリフォームが完了した数年後、地震や台風をきっかけに、建物の根幹に関わる構造的な欠陥が発覚するケースです。

失敗回避策を知らなかったBさんの事例を想像してみてください。Bさんは費用を節約するため、インスペクションをせずに中古住宅を購入し、すぐに内装リフォームを行いました。しかしその2年後、専門家が点検したところ、シロアリによって主要な柱が深刻なダメージを受けていることが判明。リフォームで綺麗になった壁や床を一度剥がして、大掛かりな構造補強工事を行う必要に迫られました。結局、リフォーム費用に加えて数百万円もの想定外の出費となり、「あの時なぜインスペクションをしなかったのか…」と深く後悔することになったのです。

リフォームは、人間で言えば「化粧」のような側面もあります。しかし、骨格が弱っていては意味がありません。事前に建物の「骨格」の状態を把握しておくことは、安全に住み続けるための絶対条件と言えるでしょう。

2. 想定外の追加工事で予算が大幅にオーバーする可能性

メリットの裏返しになりますが、これは非常に現実的なリスクです。特に、水回りのリフォームでは注意が必要と考えられます。

例えば、キッチンの交換工事で床を剥がしたところ、長年の水漏れで床下の木材が腐っていた、というケースは頻繁に起こり得ます。この場合、当然ながら腐食部分の修繕が追加で必要となり、数十万円単位の追加費用と工期の延長は避けられません。当初の予算計画が大きく狂い、予定していた他のリフォームを諦めざるを得なくなったり、最悪の場合はローンを追加で組む必要が出てきたりする可能性すらあります。こうした事態は、綿密な資金計画を立てている佐藤さんのような方にとって、大きな精神的・経済的打撃となるはずです。

3. 欠陥を知らずに不適切なリフォームをしてしまう恐れ

建物の状態を正しく理解しないままリフォームを進めると、良かれと思ってやったことが、かえって問題を悪化させてしまう危険性があります。

例えば、外壁のひび割れ(クラック)を単なる見た目の問題だと考え、上から塗装を塗り直すだけで済ませてしまうケース。もしそのひび割れが、雨水の侵入経路となっていた場合、塗装で表面を塞いでも内部への水の侵入は止まりません。むしろ、水の出口まで塞いでしまうことで、壁の内部で湿気がこもり、構造材の腐食を加速させてしまう恐れがあるのです。

本来であれば、ひび割れの原因を特定し、適切に補修した上で塗装を行うべきです。ホームインスペクションを行っていれば、こうした「見当違い」のリフォームを防ぎ、根本的な解決に繋がる正しい工事を選択することができます。

では、これらのリスクを回避するために必要なホームインスペクションには、一体どれくらいの費用がかかるのでしょうか。次の章では、気になる費用相場について詳しく解説します。


どこまで見てくれる?リフォーム前のホームインスペクションの主な調査項目

この章では、ホームインスペクターが具体的にどのような視点で、住宅のどの部分をチェックするのか、その主要な調査項目を解説します。これにより、診断で何が分かるのかを具体的にイメージできるようになります。

構造耐力上の安全性(基礎、柱、梁など)

建物の骨格として、安全に住み続けるための最も重要な部分です。たとえ内装が新しくても、構造が脆弱では意味がありません。

  • 基礎:コンクリートに幅0.5mm以上の「構造クラック」と呼ばれる危険なひび割れがないか、鉄筋が露出していないか(爆裂)、建物が不自然に沈下(不同沈下)していないかなどをチェックします。
  • 柱・梁:シロアリの被害(蟻害)や腐食(腐朽)がないか、大きな割れや傾きがないかを確認します。特に、湿気がこもりやすい床下や、雨漏りの影響を受けやすい小屋裏(屋根裏)は入念に調査されます。
  • 床・壁の傾斜:専用の機材(レーザーレベル等)を使い、部屋の床や壁が規定値以上に傾いていないかを計測します。大きな傾きは、地盤沈下や構造体の歪みが原因である可能性が考えられます。

これらの調査により、建物の構造的な強度がどの程度保たれているかを評価します。

雨漏り・水漏れの可能性(屋根、外壁、給排水管など)

雨漏りや水漏れは、建物の寿命を縮める最大の要因の一つです。放置すると構造材の腐食やシロアリの発生に繋がり、大規模な修繕が必要になるため、早期発見が極めて重要です。

  • 屋根:瓦やスレートなどの屋根材に、割れ、ズレ、剥がれがないか。また、屋根材の接合部分や棟板金のシーリング(防水処理)が劣化していないかを、可能な範囲で(双眼鏡やドローン、直接登って)確認します。
  • 外壁:外壁材のひび割れやシーリングの劣化、塗装の剥がれなどをチェックします。これらは壁内部への雨水の侵入経路となる可能性があります。
  • 室内・小屋裏:天井や壁に雨染みがないか、小屋裏の野地板や垂木に雨漏りの痕跡がないかを確認します。赤外線サーモグラフィカメラを使い、壁内部の温度差から水分を検知することもあります。
  • 給排水管:キッチン下や洗面台下、床下などの給排水管から水漏れがないか、異臭や詰まりの兆候がないかを調査します。

断熱材の施工状況やシロアリ被害の有無

快適な居住性や建物の耐久性に関わる重要なポイントです。リフォームで断熱性能の向上を考えている場合、現状の把握は必須となります。

  • 断熱材の施工状況:小屋裏や、可能であれば壁の点検口などから、断熱材が正しく施工されているか、隙間なく充填されているか、湿気で性能が低下していないかなどを確認します。断熱材の欠損は、夏の暑さや冬の寒さに直結するだけでなく、結露の原因にもなります。
  • シロアリ被害の有無:床下の土台や大引、束柱といった木材に、シロアリが通った道である「蟻道(ぎどう)」や、食害の痕跡がないかを重点的にチェックします。玄関の上がり框(かまち)や浴室の周辺は特に被害が出やすい箇所です。

これらの専門的な調査を通じて、建物の現状が多角的に明らかになります。それでは、実際にインスペクションを依頼する場合、どのような流れで進むのでしょうか。次のステップで具体的に見ていきましょう。


リフォーム前のホームインスペクション|依頼から完了までの5ステップ

この章では、実際にホームインスペクションを依頼しようと決めてから、診断報告書を受け取るまでの具体的な流れを5つのステップに分けて解説します。この手順通りに進めれば、初めての方でもスムーズに依頼できます。

STEP1: 業者探しと比較検討

まずは、ホームインスペクションを実施してくれる業者を探すところから始まります。インターネットで「ホームインスペクション + 地域名」などで検索すると、多くの業者が見つかるでしょう。

ここで重要なのは、必ず2~3社以上の候補をリストアップし、比較検討することです。各社のウェブサイトで、料金体系、調査範囲、過去の実績、所属するインスペクターの資格(一級建築士など)を確認します。そして、必ず見積もりを取り、サービス内容と料金を比較しましょう。この段階で、電話やメールでの対応の丁寧さや迅速さも、業者を見極める良い判断材料になります。

STEP2: 申し込みと調査日の調整

依頼する業者が決まったら、正式に申し込みを行います。契約書や申込書の内容をよく確認し、署名・捺印します。その後、業者と調査を実施する日時を調整します。

調査日を決める際には、天候も考慮に入れると良いでしょう。例えば、雨漏りのチェックを重視したい場合、雨の日やその翌日に行うと、水の侵入経路が特定しやすくなる場合があります。業者のスケジュールにもよりますが、可能であれば相談してみる価値はあります。

STEP3: 現地での調査(立ち会いを推奨)

調査当日は、ホームインスペクターが現地を訪れ、2~3時間かけて建物の隅々までチェックします。この際、可能な限り調査に立ち会うことを強く推奨します。

なぜなら、立ち会うことで、報告書だけでは伝わりにくい劣化状況のニュアンスを、インスペクターから直接、その場で説明してもらえるからです。「このひび割れは構造に影響ないものですか?」「この床のきしみの原因は何だと考えられますか?」といった疑問をすぐにぶつけることができます。また、専門家がどのような視点で家を見ているのかを知ることは、今後のメンテナンスにも役立つ貴重な経験となるでしょう。

STEP4: 診断報告書の受領

調査後、通常は1週間から10日程度で、診断結果をまとめた詳細な報告書が送られてきます。報告書には、調査した箇所の写真がふんだんに使われ、劣化状況や指摘事項が具体的に記載されています。

良い報告書は、専門用語ばかりでなく、誰が読んでも理解しやすい言葉で丁寧に解説されています。指摘事項については、その緊急性や重要度がランク分けされていることが多く、リフォームの優先順位を考える上で非常に役立ちます。隅々までしっかりと読み込み、自宅の状態を正確に把握しましょう。

STEP5: 報告内容に関する質疑応答

報告書を読んだ上で出てきた疑問点や、さらに詳しく知りたい点については、業者に問い合わせて説明を求めましょう。信頼できる業者であれば、アフターフォローとして、報告内容に関する質疑応答に快く応じてくれるはずです。

この段階で、指摘された問題点に対する一般的な修繕方法や、概算の費用感などを聞いておくのも良いでしょう。これにより、次のステップであるリフォーム会社との打ち合わせを、より具体的かつ有利に進めることができます。

さて、一連の流れは掴めたでしょうか。このプロセスの中で最も重要なのが、最初の「業者選び」です。次の章では、後悔しないための業者選びの秘訣を詳しく解説します。


【最重要】失敗しないホームインスペクション業者の選び方5選

この章では、数ある業者の中から、本当に信頼できるパートナーを見つけ出すための、絶対に外せない5つのチェックポイントを提示します。この基準で選べば、質の低い業者に当たってしまうリスクを限りなくゼロに近づけることができるでしょう。

1. 「一級建築士」の資格保有者が在籍しているか

ホームインスペクターになるために必須の国家資格は現状ありませんが、その知識と技術レベルを客観的に判断する上で、「一級建築士」の資格は非常に重要な指標となります。

一級建築士は、建物の設計・工事監理に関する高度な知識と経験を持つ国家資格者です。構造の安全性や法規に関する深い理解があるため、より専門的で信頼性の高い診断が期待できます。業者を選ぶ際には、ウェブサイトの会社概要やスタッフ紹介ページを確認し、必ず一級建築士の資格を持つインスペクターが在籍し、実際に診断を担当してくれるかを確認してください。

2. リフォーム会社と利害関係のない第三者機関か

ホームインスペクションの価値は、その「中立性・客観性」にあります。そのため、診断を依頼する業者は、リフォーム工事を請け負う会社と資本関係や提携関係のない、完全に独立した第三者機関でなければなりません。

もし、リフォーム会社が紹介するインスペクションサービスを利用する場合、その診断結果がリフォーム工事を受注する目的で歪められる可能性を否定できません。例えば、不必要な工事を推奨したり、逆にリフォーム会社にとって不都合な欠陥を軽微なものとして報告したりする恐れがあります。必ず、自ら探し、リフォーム会社とは全く利害関係のない業者を選びましょう。

3. 豊富な実績と専門知識を持っているか

診断の精度は、インスペクター個人の経験値に大きく左右されます。これまでにどれくらいの件数の住宅診断を手掛けてきたか、その実績は業者選びの重要な判断材料です。

多くの業者はウェブサイトで過去の実績件数を公開しています。年間数百件以上の実績があれば、一つの目安となるでしょう。また、ブログやコラムなどで住宅診断に関する専門的な情報を発信している業者は、知識レベルが高く、常に最新の情報を収集している優良な業者である可能性が高いと考えられます。戸建て、マンション、木造、鉄骨造など、ご自身の住宅と同じタイプの建物の診断経験が豊富かどうかも確認したいポイントです。

4. 詳細で分かりやすい報告書を作成してくれるか

診断報告書は、インスペクションの成果が凝縮された最も重要な納品物です。契約前に、必ず報告書のサンプルを見せてもらい、その質を確認しましょう。

チェックすべきポイントは以下の通りです。

  • 写真の量と質:指摘箇所がどの部分か、写真で明確に分かるか。
  • 分かりやすさ:専門用語の羅列ではなく、素人でも理解できる平易な言葉で解説されているか。
  • 具体性:単に「劣化あり」だけでなく、なぜそれが問題で、どのようなリスクがあり、どう対処すべきかまで具体的に記述されているか。
  • 網羅性:調査した項目が一覧になっており、問題がなかった箇所も「問題なし」と明記されているか。

質の高い報告書は、それ自体が住宅のカルテとなり、将来にわたって価値を持つ資産となります。

5. 調査後の相談やサポート体制は充実しているか

インスペクションは、報告書を受け取って終わりではありません。その診断結果をリフォーム計画にどう活かしていくかが重要です。そのため、調査後のサポート体制が整っているかどうかも確認しましょう。

具体的には、「報告書の内容について、電話やメールでいつでも質問できますか?」「指摘事項の補修方法について、一般的なアドバイスをもらえますか?」といった点です。優良な業者は、診断後も顧客の良き相談相手として、親身に対応してくれるはずです。料金の安さだけで選ばず、こうしたトータルなサービス品質で判断することが、最終的な満足度に繋がります。

これらの基準をクリアする業者に依頼すれば、診断結果を最大限に活用する準備が整います。次の章では、その具体的な活用法を見ていきましょう。


診断結果を120%活かす!リフォーム計画への具体的な反映方法

この章では、手元にある診断報告書を単なる「評価書」で終わらせず、リフォーム計画を成功に導くための「戦略書」として最大限に活用する、3つの具体的なアクションプランを提示します。

1. 診断報告書をリフォーム会社に提出して正確な見積もりを取得する

リフォーム会社との打ち合わせが始まったら、早い段階で診断報告書のコピーを提出しましょう。そして、「この報告書に記載されている指摘事項をすべて改善するための提案と見積もりをお願いします」と明確に伝えます。

これにより、前述の通り、各社が同じ土俵で提案を行うため、見積もりの精度が格段に上がり、比較検討が容易になります。また、あなたの住宅に対する理解度が深く、問題の本質を捉えた的確な提案をしてくれる業者こそが、信頼に値するパートナーであると見極めることができます。報告書を無視したり、軽視したりするような業者は、その時点で候補から外すべきでしょう。

2. 修繕の優先順位を付けてリフォーム計画を立てる

報告書には、各指摘事項の緊急性や重要度が示されています。これに基づき、リフォームで対応すべき項目の優先順位を付けましょう。

優先度内容具体例アクション
高(Must)構造の安全性、雨漏り、シロアリなど、建物の寿命や居住者の安全に直結する項目基礎の構造クラック、屋根からの雨漏り、土台のシロアリ被害今回のリフォームで必ず修繕・補強する。
中(Should)放置すると将来的に大きな問題に発展する可能性がある項目外壁のシーリング劣化、給排水管の軽微な腐食、断熱材の欠損予算に余裕があれば、今回のリフォームで同時に対応することを検討する。
低(Want)機能上・安全上の問題は小さいが、美観や快適性に関わる項目内装の傷や汚れ、設備の旧式化予算や他の工事との兼ね合いを見て、将来的な課題として計画に含める。

このように表で整理することで、やるべきことが明確になり、予算配分のブレがなくなります。ご自身の希望(キッチンの交換など)と、住宅の維持に必要な修繕のバランスを取りながら、賢明なリフォーム計画を立てることができます。

3. 診断結果を基に値引き交渉や契約内容の調整を行う

この活用法は、特に中古住宅を購入してリフォームする場合に有効です。もし購入前のホームインスペクションで、売主も把握していなかった重大な欠陥が見つかった場合、その修繕にかかる費用相当額を、売買価格から値引きしてもらう交渉材料として利用できます。

例えば、インスペクションで「給湯管からの水漏れがあり、修繕に30万円かかる」と判明した場合、その事実を客観的な報告書として提示することで、論理的な価格交渉が可能になります。また、契約前に欠陥の存在が明らかになることで、その修繕責任が誰にあるのかを契約書に明記(瑕疵担保責任の特約など)し、後のトラブルを未然に防ぐことにも繋がります。

さあ、これでリフォーム前のホームインスペクションに関する知識は万全です。最後に、多くの方が抱く疑問についてQ&A形式でお答えします。


リフォーム前のホームインスペクションに関するよくある質問

この章では、佐藤さんのような方がホームインスペクションを検討する際に、最後のひと押しとして疑問に感じやすい3つのポイントについて、Q&A形式で明確にお答えします。

Q1. 依頼する最適なタイミングはいつですか?

A1. リフォーム会社に見積もりを依頼する「前」が最適です。

理想的な流れは、「ホームインスペクションの実施 → 診断報告書の受領 → 報告書を基にリフォーム会社へ見積もり依頼」です。

なぜなら、先にリフォーム会社と話を進めてしまうと、その会社の提案に考えが引きずられてしまう可能性があるからです。まず、第三者による客観的な診断で家の状態をフラットに把握し、それを基準としてリフォーム計画を立て、業者選定に進むのが最も合理的で、失敗の少ない進め方と言えるでしょう。中古住宅を購入してリフォームする場合は、売買契約を結ぶ前に実施するのが鉄則です。

Q2. リフォーム会社にインスペクションを任せても大丈夫?

A2. 利害関係のない第三者機関に依頼することを強く推奨します。

リフォーム会社の中には、「無料で点検しますよ」と提案してくるところもあります。しかし、その点検はあくまでリフォーム工事を受注するための営業活動の一環である可能性が高いと考えられます。

その結果、自社に都合の良い報告がなされたり、本来不要な工事まで提案されたりするリスクが伴います。診断と施工は、役割を明確に分ける「診断分離」が原則です。費用はかかりますが、必ずリフォーム会社とは独立した専門のインスペクション業者に依頼してください。その投資は、必ずリフォーム全体の成功という形で返ってきます。

Q3. 調査にはどれくらいの時間がかかりますか?

A3. 一般的な一戸建て住宅で、2時間から3時間程度が目安です。

建物の大きさや構造、劣化状況によって多少前後しますが、多くの場合は半日もかからずに終了します。前述の通り、この調査にはできるだけ立ち会うことをお勧めしますので、半日ほどスケジュールを確保しておくと安心です。

調査当日は、インスペクターが点検口から床下や小屋裏に入れるよう、事前に点検口周辺の荷物を片付けておくと、調査がスムーズに進みます。ご自身の目で、普段見ることのできない家の内部を確認できる、またとない機会となるでしょう。

ここまでお読みいただき、ありがとうございます。リフォーム前のホームインスペクションが、いかにリフォーム計画の成功、そして大切な住まいの価値を守るために重要であるか、ご理解いただけたかと存じます。見えないリスクを事前に把握し、客観的なデータに基づいて計画を進めることで、後悔のない、満足度の高いリフォームは実現できます。ぜひ、今回の記事を参考に、賢いリフォーム計画の第一歩を踏み出してください。

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